また、ウルシノキは他の樹木に比べて成長が早いことから、CO₂の吸収量(固定化)が多いと考えられており、環境保護の観点からも評価されているという。
現在、ELEMUSでは年間約5,000本のウルシノキの苗を栽培し、行政や地元住民、NPOと協働し、愛知県の中山間地へ植樹を行い、原料の国内生産へ向けて栽培、研究を進めており、今後は、欧州での植樹、栽培を実現させるべく研究を重ねるとともに、漆を効率よく採取する技術の開発を目指していく。
原材料は植物資源のみ
「URCYL」の特徴を詳しくみていこう。
石油由来プラスチックの一種と同じ化学構造を持つウルシノキの樹液「漆」と、主に端材や間伐材を原料に粒度をカスタマイズできるELEMUSの独自技術で微粉砕した木粉を使用し、東京都立産業技術研究センターとの特許技術をベースに発展させた技術を用いて製造される「URCYL」は、植物資源のみを原材料にした100%バイオマス成形原料。
ABS樹脂とほぼ同等程度の物理的強度を持ち、抗菌性、抗ウイルス性を併せ持つ、耐熱性の高い素材。 食洗機の使用も可能なため、食器をはじめとする生活用品や、照明器具、工業製品の部品としてなどさまざまな活用が見込まれる。
漆と微細な木粉が混ざり合うことで生まれた「URCYL」は、あらゆるものづくりの開発者、デザイナーへ漆の再解釈を促し、現場が抱える悩みや壁を突破させる可能性を多分に含んだ強くしなやかな素材だ。
掌から感じる艶やかさや重さ
デザインディレクターを務めるのは秋山かおり氏。
デザインの領域が広がる今、あたりまえを問い、私たちの目の前にあるものを一から見直すアプローチで「STUDIO BYCOLOR」として活動。2022年に世界3大デザイン賞のひとつiF DESIGN AWARDを受賞している。
そんな秋山氏によると、国際見本市「メゾンエオブジェ」では、「URCYL」の背景にあるマテリアルの循環を、種から苗、栽培、そしてプロダクトへの展開案を一連の流れで伝える。