◆クィア映画、なのか?
『怪物』は、海沿いの町の小学校で起こった体罰事件からはじまる。事件を取り巻く保護者、教師、児童の視点で少しずつ謎が解き明かされる、ミステリー作品だ。
見ている最中、困惑した。これがクィアなのか?と。
しかし物語が進み、事件の全容がつまびらかになる中、私は本作を、性的マイノリティ性に悩む当事者だけの物語とはとても思えなくなった。むしろ、当事者の周りにいる誰もが直面する、葛藤(かっとう)の物語に思えてならず、監督の「誰の心の中にでも芽生える」という言葉が妙に納得できた。
そして、子ども時代に心の中で思っていたことを唐突に思い出した。それは、「バケモノになりたくない」というものだ。