大平:ええ~。

原田:今もそうですけど、一人で行ってます。一人で行った時の店の反応も見たい。ドキドキしながら店に入る感じが、主人公の祥子さんとも合うかなって。

 で、これの作品が韓国でも翻訳されて、韓国でブックフェアがあった時にリモートをやったことがあったんですね。その時に韓国の方に「『ランチ酒』とか『あさ酒』は、何が一番大切ですか? 食べ物? 土地? お酒?」って聞かれたんです。

 私はやっぱり「場所」が一番大切だと思うし、東京は本当に一個ずつの町が本当に全然違ってる。例えばですけど、渋谷、代官山、中目黒って隣り合ってる駅ですけど、一つずつ全然違いますよね。

大平:うん。全然違う。

原田:韓国の方にもお話聞いて来たんですけど、昔は韓国って、全然ひとりでご飯食べない。男性も食べないんですって。

大平:男性もですか!?

原田:はい。あんまり一人では食べないって。だけど『孤独のグルメ』とか『深夜食堂』が韓国でも流行って、ひとりご飯食べたり、お酒を飲む人が増えたっていう話はありました。

◆東京は「ここでしか書けない物語」の宝庫

定食
大平:『あさ酒』だけじゃなくて、原田さんって絶対町が出てくる。何年か前にトークイベントに伺った時に、町から題材を探すと聞きました。著書の『古本食堂』も町が題材なんですよね?

原田:はい。神保町ですね。

大平:町と食の繋がりを凄く大切にされていますよね。私もその時『東京の台所』をやっていて、代官山と中目黒は、ひと駅なのにまるで違う。

 取材で電車使うんですけど、その方の家へ行くまでの風景が町ごとに違って、特に「スーパーマーケットないな、この町」とか。取材の時はまずその話から始めるんですね。「スーパーはどこに行かれてるんですか?」って。

「今ネットで買ってて」とか「あっちの駅にいいのがあって」「15分歩いたらこんなお店があって」とか。そんな質問でその暮らしを掘り出せるので。