ただ、ここで少し考えてみましょう。30年間毎月5万5000円使うために総額1980万円必要だとして、「65歳の時点で」1980万円の現金が必要なのでしょうか。
例えば、この投資信託が1000万円分あったとします。利回り7.2%だと1年後には1072万円となり72万円増えたことになります。仮に72万円分売却してもまだ残高は1000万円あります。実際には毎年必ず7.2%増えるものではありませんが、これを繰り返すと理論上毎年72万円受け取ることができます(図表1)。
図表1
65歳まで海外株式の投資信託に5万円ずつ投資すると、約1138万円になっていた先ほどの例であれば、毎年約82万円ずつ受け取ることができる計算です。これなら毎月5万5000円の不足であれば、十分カバーできるのではないでしょうか。
また、毎年決まった額を売却するのではなく、例えば「その年の資産残高の5%ずつ取り崩す」という方法もあります。こちらは運用が好調なときは多く、不調なときは売却額が少なくなりますので、使える額に変動はありますが、取り崩す割合よりも運用利回りが大きければ、老後生活に使いながら資産残高も増えていくことになります。
また、家族に残すという選択肢も視野に入れることができます。
おわりに
積立期間が10年よりも20年、30年と長いほうが運用成果は大きくなる可能性が高いため、投資を始める年齢は若いほうが有利なことは間違いありません。
しかしA氏の例のように「運用しながら取り崩す」ことを意識すると、若い世代に比べ積立期間を長く取ることができなかったとしても取り崩し期間が長いため、結果的に投資信託を長期間保有でき、トータルのリターンも大きくなります。ポイントは「積立をやめたときに全部売却せず、少しずつ取り崩しながら長く保有し続ける」ことです。
人生のなかでは、“今が一番若いこと”は間違いありません。ご自身で一歩踏み出すことが難しければ、まずは専門家に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。