――具体的にどんなコメントがありましたか?
こっちのけんと:「死ぬな!」のときには、現在進行形で自殺を考えている方から相談がありました。自殺の仕方も考えていると書いてあり、それを自分が救うというよりは、同じ経験をしていた僕も自分の話をしてやり取りをしました。その方は今も生きてらっしゃいます。
――生きてこそ、また「はいよろこんで」のようなヒット曲を聴くことができますね。
こっちのけんと:そうです。「死ぬな!」では、SNSを通じて連絡やダイレクトメッセージが何百件もきていた現状がありました。それに対してとりあえず「死ぬな」と伝えても無理難題です。じゃあ今後どうやって生きればいいんだと思ってしまう。「はいよろこんで」でそれをさらに補足しました。自分の中ではつながっている作品という感覚があります。
◆YouTubeで長文の「概要を書き始めた経緯」
――YouTubeのコメント欄が集会所になっているということですが、概要を読むと「日々SOSを出す癖をつけたいと思い制作しました」など、制作意図が長文で明記されています。概要にここまでの注釈をつけるアーティストはめずらしいと思ったのですが……。
こっちのけんと:「はいよろこんで」は、聴き心地でただただ楽しめる曲にしようという目標がありました。でもただのノリだけだとそれは僕がやりたいことと違うなと思ったのも事実です。僕の経験をしっかり明記したほうが曲をより楽しめると思いました。その上で気づいてくれる方に向けて、プラスアルファになることがあればと思い、概要を書き始めた経緯があります。
――集会所としての役割ですね。デジタルリリースの時代でも、ひとつのライナーノートを読んでいるような。
こっちのけんと:たしかにアナログ的でもあります。純粋に曲だけを楽しんでいただくことはもちろんですが、元はといえば、さまざまな事情を抱えた方が連絡を下さり、そうした自分のうしろにいる方たちに向けた曲作りです。過剰に情報を入れて蛇足気味になったとしても、伝わりきらないところを補完したいなと思いました。