さまざまなハラスメントが社会問題として話題になっている昨今ですが、自分が被害にあった時、だれに相談すればいいのか、どこからがハラスメントと呼ばれるのかがわからず頭を悩ませている方も多いようです。そんなお悩みに弁護士、齋藤健博さんがお答え。今回は取引先とのトラブルについてです。

Q. 取引先からのセクハラ。なるべく大ごとにしたくないけど......

上司の取引先を引き継いで、私が地方営業を担当することになりました。けれど、その取引先の男性というのが厄介で困っています…。

広告代理店に勤めていると、軽いセクハラやパワハラは正直日常茶飯事で、ある程度私にも免疫がついていると思うのですが、先日出張へ行った時の飲み会終わりに、こっそりと取引先のお偉いさんに「上司たちと別れた後、ホテルの部屋へ来ないか」と誘われました。その時はまだ複数人でいたので、無理やり連れて行かれるとかはなかったのですが、解散してホテルに戻った後にも、着信が何度もありました。その時は酔っ払って寝ていた、ということにして連絡を無視してやり過ごしたのですが、次回からの出張が不安で仕方ありません。

このままだと、私が失注して、上司から責められるのではないかと正直ビビりながら過ごしています。(まだ引き継ぎ期間中なので、その方と私ひとりでやりとりするということがないので、今のところは問題がないのですが…)

取引先からのセクハラはどう対処すれば良いのでしょうか。なるべく大ごとにはしたくないな、と思っています。(花/28歳/広告代理店)

A.「ハラスメントに該当する可能性があるので」と、事前に社内でも共有を

実は、取引先でのセクハラも、セクハラ被害として不法行為責任が成立します。

上司からの引き継ぎとのことで、替えが効かない担当者になると思いますから、ストレスがたまるでしょう。広告代理店ですと、華やかな世界ですし、その分、セクハラ被害に遭いやすい実態もあるでしょう。それでも、出張後という日常とは異なる空間において、こっそりと、人目を離れて、取引先のお偉いさんという上の立場の人から「上司たちと別れた後、ホテルの部屋へ来ないか」と誘われてしまうと、全く断れない状況に至ると思います。もちろん、複数人でいれば、完全な強要まではないといえましょうが、着信が何度もあるなど、ハラスメントの領域に至っています。もちろん、花さんの立場もあるので、ただちに大事などにしてしまうと、失注するリスク、社内でのポジションの問題はあるでしょうが、まずは、ハラスメントが成立していることを明確に示す。また、軽い抗議などをしておく、などはよろしいかと思います。

今後の関係があることなので、裁判にする、訴訟にするなどと話をするのではなくて、ハラスメントに該当する可能性があるので、と、事前に社内でも共有しておくべきでしょう。