この方法は親の住んでいた実家(土地を含む)を売却して現金化し、残された金融資産と合算し、それを相続人同士で分割する方法です。すべての不動産を売却するため、相続財産は原則金融資産だけとなり、最もトラブルなく相続が完了する方法です。
とくに相続財産が不動産だけといったケースや、相続財産自体が少ないケースほどトラブルになりやすいといわれており、この方法で現金化ができれば問題は解決できそうです。
ただし、相続税の申告期間が決められているため、なるべく早く実行することが求められます。売却時期を巡り意見対立が起こった、思ったような価格で売却ができない、といった事態が起こると、売却時期が遅れることも考えられます。
代償分割・1人が相続、代償金を支払う
この方法は複数の相続人のうち、1人だけが親の住んでいた実家を相続、ほかの相続人に対し相続額に見合った金額を「代償金」として支払って解決する方法です。例えば、亡くなった親と同居していた方が、住んでいた家への愛着があるとの理由で、他の相続人に相続額に見合った金額を支払う方法です。
しかしこの方法を採用する場合、実家に居住する相続人の支払い能力が問題となります。地方の土地であれば地価自体も比較的安いので、資金的にも対応可能かもしれません。しかし東京のような大都市では地価も高騰しており、代償金が高額となり支払いも容易ではありません。
もし一度に支払うことができない場合は、双方が支払い条件などで合意し、契約書を作成、何年かに分割して支払うこともできます。ただし、受取側が分割払いに難色を示すと、この方法では解決できなくなります。
共有分割・相続人全員で共有する
この方法は、上記の分割方法が難しい場合に、実家を相続人全員の共有名義とする方法です。もし誰か1人が実家に住むことを希望するときは、相続人同士の協議により家賃を決め、その金額を他の相続人に支払います。
共有名義にすると、誰か1人が売却を希望しても、全員の合意がなければ売却はできなくなります。個々の事情があり、意見の対立が起こることもあるため、このことが原因で、これまでの人間関係が崩れる可能性すらあります。
共有名義自体が決して望ましい分割方法ではないため、共有分割を決めた時点でいつまでに売却するのか、地価がいくらになったら売却するのか、あるは何年後をメドに売却をするのか、といったことを共有分割を決めた段階で合意しておくと、トラブルの防止にもなります。
いずれにしても、相続人同士が相談しなるべく早く、どのような分割方法にするかの結論を出すことが求められます。決められた相続税納付期限が迫っているからです。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト