◆私利私欲に走る悪役も、大きな心で愛して演じる
“いい人”的な役回りが多いイメージの西田氏ですが、もちろん皆さんご存知の通り、実に幅広い役どころを演じてきました。蛭間は完全にヒールの役でしたが、前述したとおり西田氏によって愛すべきキャラクターに仕上がっています。とても、“人間くさい”。
人間だから失敗することも、私利私欲に走ってしまうことも、言うことがコロッと変わってしまうこともある。西田氏はそんな“人間くささ”を、否定することなく大きな心で受け止めて、役を心から愛し、演じているのではないでしょうか。だからこそ、どんな役であっても、観る者は西田敏行という人間の大きさを感じずにはいられないのです。
今回も蛭間重勝として、生き生きと企み、麻雀をし、恫喝し、泣いて、笑って、すっとぼける姿で楽しませてくれました。西田氏はアドリブ演技が多いことでも有名だったので、どこからどこまでがアドリブなのか? もはや全部がアドリブなのではないか? とすら思わされます。
劇中で、蛭間と同じ病院で働く医師・加地秀樹(勝村政信)が「蛭間名誉会長は、ずっと死なない気がします」と軽口を叩くシーンがありました。そんな蛭間を演じる西田氏が亡くなったことが、未だに信じられない気持ちです。改めて、偉大すぎる俳優さんだったと強く感じました。
◆自ら歌い上げた応援歌「唯一無二」が最高!
蛭間が愛してやまない東帝大学の応援歌「唯一無二」は、「ゆ・い・つ・む・に~」と始まります。これまでにもドラマで何度か、その美声で応援歌を披露していましたが、劇中でも1番を熱唱。映画館に響き渡る西田氏の歌声は、また格別でした。もう新しい作品で、彼を観ることができないと思うと寂しさが募るばかりですが、劇中のセリフどおり『ドクターX』の世界で、ずっと生きていてくれる気がします。