ティアラ、プリンセス、王冠
 どうやらサークル内には、彼女はみんなの共有財産で誰かひとりが手に入れてはいけないという暗黙の了解に近い協定のようなものが存在していたようなのです。彼女は大切に大切に姫扱いをされた結果、大学時代に彼氏を作ることはありませんでした。

 そして、彼女の苦悩は大学卒業後から始まります。

◆彼氏ができないまま30歳に

「就職先が美容系だったのと、オタクの男性以外と接することに苦手意識があって、男性と個人的に親しくなるタイミングがなかったんです。彼氏ができないまま気が付いたら30歳を迎えていました。

 もちろん、あの大学時代がすべての原因とは言いませんが、大事にされすぎたことで気が付けば“受け身”体質になっていたり、どこかで『私が好きになることで誰かを傷つけてしまうんじゃ…』なんて勝手な思い込みがブレーキになっていたのは確かです」

 そして近年になってサークルのメンバーとの飲み会が開催され、映子さんは久しぶりに顔を出したそうです。しかし、そこで知ったのは自分をチヤホヤしてくれていたはずの男性たちが、みんな結婚してそれぞれ幸せな家庭を築いていたという現実です。

オタサーの姫
「それこそ奈落の底に落ちるというか……これまでの生き方を完全否定されたような感覚になりましたね。どん底に落ちた気分でした。

 奥さんや子供の写真を嬉しそうに見せてくるメンバーに対しても『勝手に持ち上げて勝手に突き放して勝手に幸せになりやがって!』という気持ちが沸き上がってしまって……。もちろん、理性では誰も悪くないこともわかってました。でも、あの時にサークルの誰か一人でもあの均衡を破ってくれていたら……と、今も思ってしまう自分もいたんです」

◆「私はもう姫じゃない、今はただのモテないアラサーだ!」

 大学時代から成長し、すっかり変貌を遂げていたサークルメンバー。なのに、映子さんはいまだにその頃にとらわれていることに、ようやく気づきました。