保険料負担は要注意:恩恵が受けられないケースも

死亡した本人“以外”が保険料を負担していた場合

例えば夫が亡くなり妻が保険金を取得したが、保険料を長男が負担していた場合には、この保険金は「長男から妻への贈与」とみなされる。

保険金の非課税は相続税に限った特例であり、贈与税の場合には適用されない。かつ、贈与税は税率(超過累進税率)が相続税より高くなる上に、基礎控除の恩恵も受けられない。

ちなみに1,500万円の保険金に対しては、40%の超過累進税率が適用され、475万円の贈与税が課される。

保険金受取人自身が保険料を負担していた場合

一時所得として所得税が課される。ただし相続や贈与の場合と異なり、受取保険金そのものに課税されるわけではなく、負担した保険料及び特別控除額50万円を差し引いた額に1/2を乗じた金額が課税対象金額とされる。

相続人以外が保険金を受け取った場合

死亡保険金の非課税制度の適用を受けることができるのは、相続人に限られる。本来の相続人以外(例えば亡くなられた方に子供がいる場合、兄弟は相続人に該当しない)が保険金を受け取った場合には、恩恵は受けられない。

本来の相続人であっても、相続を放棄した場合には適用除外となるので注意が必要だ。

相続税対策として勧められる4つの理由

相続税対策はいくつもあるが、その中で保険金の非課税制度が勧められる理由を4つまとめた。

理由1 課税リスクが回避できる

中小企業主や資産家には、金融機関からさまざまな節税スキームが紹介されることが多い。

一方で国税局は、たとえ法令上は合法でもこうした新手の節税スキームを「租税回避行為」として認めないことがある。2016年には、持ち株会社を利用した相続税対策が相次ぎ否認された。

生命保険金の非課税制度は70年近く認められている制度であり、巷の節税スキームのような課税リスクを抱えることは無い。

理由2 死亡後すぐに使える

被相続人の死亡後、相続人は相続財産をすぐには使えない。

例えば株式・投信・預貯金を引き出すには、被相続人の戸籍謄本(16歳まで遡った原戸籍謄本含む)、相続人全員が署名・捺印した遺産分割協議書(無い場合は委任状)、相続人全員の印鑑証明書(発行後6ヵ月以内)、払い戻しを受ける人の実印が必要で、取り寄せるにも手間がかかる。

特に夫が妻の生活を支えていたような場合、夫の死亡により、妻は当座の生活費にも困ることも考えられる。そうでなくても、葬儀や納骨など物入りの弔事も多い。

保険金なら被保険者の死亡後、保険会社に所定の書類(死亡診断書・パスポートなどの本人確認書類・保険会社所定の請求書)を添付して請求すれば、すみやかに受取人に対して支払われる。

免責事由への該当・告知義務違反・約款への抵触等に関し調査・確認や照会が必要な場合を除き、一般的には一週間程度で保険金が下りる。

なお保険契約で受取人が定められていれば、他の相続人の合意なども必要ない。