日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県旧宮守村(遠野市)を写真とともに紹介する。
Vol.354/岩手県旧宮守村(遠野市)
この日は遠野市へ向かった。遠野は内陸部の盆地で、交通の要所として栄えたまち。柳田國男の『遠野物語』を見聞きしたことのある人もいると思うけれど、遠野では神様や妖怪、河童が身近にいる暮らしが、今も日常の中にひそんでいる。河童だって見えなくても、ほんとうはいるんだよ、って遠野にいると感じられる。それに、しし踊りや神楽といった伝統芸能も、市に60以上の団体があって盛んだ。もし遠野に住んだら、面白いだろうなあと思う。
そして、遠野市の西に位置する旧宮守村へ入ると、うつくしい田園風景と暮らしが広がっていた。「宮守川橋梁」にも立ち寄ってみると、大きなアーチ橋と足元の川の流れがとても清々しい。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のモチーフになったとも言われている。
また、遠野市ではホップ生産地として知られているけれど、旧宮守村は「わさび」の産地だ。道の駅でもまちの看板でも、「宮守のわさび」の文字をたくさん見かけた。そして、この日は午後、知り合いのたちと一緒に、宮守のわさび農家の方とお会いすることもできて。わさび田を見学させてもらうと、とっても冷たい清流のそばで瑞々しいわさびが育っている。尽力されている農家さんのかっこよさと、わさびのうつくしさをどちらも感じたのだった。