ここ数年で「キャッシュレス」という言葉が浸透してきましたが、キャッシュレス決済にはどんな種類があるのか、またキャッシュレス社会になるとどんなメリットがあるのか、よくわかっていない人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、キャッシュレス社会やキャッシュレス決済の種類、そのメリット・デメリットなどについて紹介します。

キャッシュレス社会は進むか?

キャッシュレスとは?

キャッシュレスとは、決済に紙幣や硬貨などの現金ではなく、クレジットカードや電子マネー、口座振替などを利用することです。キャッシュレスが浸透した社会は、「キャッシュレス社会」と呼ばれます。

日本のキャッシュレスは進んでいるのか?

キャッシュレス推進協議会が2019年4月に発表した「キャッシュレス・ロードマップ2019」によると、日本のキャッシュレス決済の比率は2016年時点で19.9%。諸外国に比べて低い水準になっています(表1)。

表1. 各国のキャッシュレス決済比率の状況(2016年)

国名 キャッシュレス決済比率
韓国 96.4%
イギリス 68.6%
中国 65.8%
オーストラリア 58.2%
カナダ 56.3%
スウェーデン 51.5%
アメリカ 46.0%
フランス 40.7%
インド 34.8%
日本 19.9%
ドイツ 15.6%

日本においてキャッシュレス決済は浸透しているとは言えません。しかし経済産業省が発表した「キャッシュレス・ビジョン2019」では2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にすることを目標として掲げています。

この先、少しずつキャッシュレス決済は浸透していくでしょう。

キャッシュレス社会のメリット・デメリット

キャッシュレス決済が進むと、社会はどのように変わるのでしょうか。ここでは、一般的に言われているメリット・デメリットをご紹介します。

<メリット>
✔︎現金を流通させるために使うコストが削減される
紙幣や硬貨には“実体”があるため、製造や輸送、保管にはコストがかかりますし、流通させるためのATMの設置にも維持・管理費用がかかります。キャッシュレス化が進めば、これらのコストを削減できるでしょう。

✔︎店や会社の業務効率が上がる
キャッシュレス化が進めば、閉店後レジのお金を数えたり、銀行に入金するためにATMに並んだりといった現金を管理するための時間が短縮されるため、業務の効率化を図れます。

✔︎海外からの観光客の消費が増える
海外からの観光客にとっては、現金しか使えない店だと両替に手間がかかるため、消費が抑えられてしまうかもしれません。キャッシュレスであれば手持ちのお金を気にしなくて済むので、消費が促されるでしょう。

✔︎お金の流れが透明になる
キャッシュレス決済では、「どこで何に使ったか」がすべて記録されます。お金の流れが透明になることで不正なお金の流通が減り、治安の向上につながります。

<デメリット>
✔︎世代間格差が生じる
特に高齢者の中には、デジタル機器に不慣れな人が少なくありません。キャッシュレス決済が急速に進むと、対応できない人は決済手段に困り、消費の落ち込みにつながる恐れがあります。

✔︎新たな詐欺が蔓延する
キャッシュレス決済の浸透によって、新たな詐欺が生まれています。例えば、本来のQRコードの上に偽のQRコードを貼り付けて売上金をだまし取る詐欺や、SNSアカウントを使って送金や集金をさせる詐欺などです。

キャッシュレス決済の種類

一口にキャッシュレス決済と言ってもその種類はさまざまで、何がキャッシュレス決済に含まれるのかわからない人もいるでしょう。

キャッシュレス決済は、大きく「プリペイド(前払い)」「リアルタイムペイ(即時払い)」「ポストペイ(後払い)」に分けられます(表2)。

表2.キャッシュレス支払手段の例

プリペイド リアルタイムペイ ポストペイ
サービス例 電子マネー
(交通系、
流通系)
デビットカード モバイルウォレット
(QRコード、
NFCなど)
クレジットカード
(磁気カード、
ICカード)
特徴 利用金額を
事前にチャージ
リアルタイム取引 リアルタイム取引 後払い、与信機能
主な
支払方法
タッチ式
(非接触)
スライド式
(磁気)
読み込み式
(IC)
カメラ/スキャナ読込
(QRコード、
バーコード)
タッチ式
(非接触)
スライド式
(磁気)
読み込み式
(IC)

QRコード決済を使ったことがなくても、交通系のSUICAやクレジットカードを利用したことがある人は多いでしょう。上記の分類は一般的なもので、モバイルウォレットの中にはプリペイドやポストペイが選べるものもあります。

今後、キャッシュレス決済の種類はさらに増えていくでしょう。

みんなはどのキャッシュレス決済を使ってる?

キャッシュレス決済にはさまざまな種類がありますが、実際にどのような決済手段が多く使われているのでしょうか。

MMD研究所とビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社が2019年に共同で行った「2020年キャッシュレス・消費者還元事業における利用者実態調査」によると、決済方法は消費者還元事業が始まった2019年10月1日の前後で以下のようになっています(表3)。

表3.消費者還元事業前後の決済利用の割合

決済方法 2019年10月1日より前 2019年10月1日以降
現金 98.3% 97.8%
クレジットカード 87.2% 87.2%
カード型電子マネー 61.4% 60.0%
QRコード決済 35.9% 45.9%
スマホ非接触決済 28.0% 30.7%
プリペイドカード 21.9% 21.1%
デビットカード 19.4% 19.3%

キャッシュレス決済の中ではクレジットカードが最も利用されていますが、消費税増税後はQRコード決済が10%、スマホ非接触決済も2.7%伸びていることがわかります。

キャッシュレス決済のメリット・デメリット

キャッシュレスのメリット

✔︎決済が速い
現金に比べ、スピーディーに会計を済ますことができます。

✔︎現金を持ち歩かなくていい
スマホやカードがあれば支払いができるので、財布や小銭入れを持ち歩かなくて済みます。財布を持ち歩かないことによって荷物が少なくなり、スリやひったくりの被害を防ぐことができます。

✔︎お金の流れを管理しやすい
お金の流れが記録されるので、店や会社だけでなく、個人の家計でもお金を管理しやすくなります。特に家計簿アプリと連携させると、自動的に支出を記録してくるので大変便利です。

✔︎手数料の削減
ATMから現金を引き出すときには手数料がかかりますし、インターネットショッピングなどでも代引き手数料などがかかることがあります。キャッシュレス決済にすると、このような手数料を削減できます。

キャッシュレスのデメリット

✔︎災害時に使えない可能性がある
キャッシュレス決済は電気と通信を利用するので、災害時に停電や通信障害が起こると使えなくなる可能性があります。

✔︎無駄遣いが増えるかも
手元にお金がなくても買い物ができるキャッシュレス決済では、ついついお金を使い過ぎてしまう心配があります。特にクレジットカード決済などのポストペイでは、お金の管理をきちんとしていないと多額の請求に困ることになるでしょう。

✔︎使える店が限られる
前述のとおりスマホ決済は大きく3種類に分かれますが、その中にもさまざまな種類があります。例えばクレジットカードにはVISAやMastercard、JCBがありますし、スマホ決済にもd払い、PayPay、LINE Payなどがあります。

これらのキャッシュレス決済は、店側がそれぞれのサービスを導入していなければ使えないので、事前にどのキャッシュレスサービスが使えるか調べておかなければなりません。

キャッシュレス決済の賢い使い方

現金とキャッシュレス決済を上手に使い分ける

毎日の通勤にはSUICAなどの交通系ICカードがあれば便利ですし、お小遣いは現金で使うと決めておくと衝動買いを防げるかもしれません。大きな買い物はクレジットカードを使うと大金を持ち歩かなくて済みます。

このように、現金とキャッシュレスはどちらが良いということではなく、どちらにもメリット・デメリットがあるので、利便性や節約などの観点でうまく使い分けるとよいでしょう。

よく使う「メインのキャッシュレス決済」を決める

現在は特にスマホを使った決済の種類が多いのですが、それらをすべて使い分けようとすると支払いや管理が煩雑になります。また、別の決済方法のポイントは合算できないので、その点でも効率的ではありません。

自分の買い物の仕方に応じて、メインのキャッシュレス決済を決めてから利用することをおすすめします。

ポイントに振り回されない

キャッシュレス決済ではポイント還元のほか、さまざまなキャンペーンもありますが、これらの「特典」目当てに無駄な支出が増えてしまっては本末転倒です。

ポイントやキャンペーンはあくまでおまけと考えて、毎月きちんと予算を立ててからお金を使うようにしましょう。

メリット・デメリットを考えてキャッシュレスを上手に取り入れよう

キャッシュレス社会の現状とキャッシュレス決済の種類をご紹介しました。「現金とキャッシュレスのどちらが良いか」という議論になりがちですが、どちらにもメリット・デメリットがあります。

どちらかに偏ることなく、自分に合った現金払いとキャッシュレス決済のバランスを取るとよいでしょう。

松岡紀史
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。

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