サッチンが殺意を込めた視線を向けていることからしても、それが無神経な質問であることは脚本家も演出家も理解しているわけです。このドラマの主人公・結ちゃん、けっこう頻繁に「なんでこんな失礼な言い方をするんだろう」「なんでこんなに性格が悪いんだろう」と感じさせるシーンが出てくるわけですが、糸島編では「震災のトラウマがあるから」で、神戸編では「トラウマを払拭してギャルになったから」なんだよな。性格が悪くて無神経な理由は、ちゃんと設定されているわけです。そこはあんまり、いい加減には作ってない。

 じゃあ、なんでその性格の悪い子が主人公なのかが、けっこうマジでわかんなくなってきました。だって、サッチンに「なんで陸上やめたん?」なんて聞いちゃう子、誰も好きになるわけないじゃないですか。リサポンにパラパラのイラストを描いたノートもらっても、翔也(佐野勇斗)にイチゴジャムもらっても、お礼も言わないでツンツンしてる女の子なんて、みんな大嫌いになるじゃないですか。なんで嫌われるような性格の子を、嫌われるとわかっていて主人公にしているのか。謎です。この子を好きになる瞬間が、ここまで一度もない。

 好きになる瞬間という話だと、翔也と結ちゃんの関係性も見ていてすごく変というか、この人たち、愛し合ってる感じがまるでしないんですよね。そもそもお互いがお互いを好きになった瞬間がよくわからないし、その関係が熟成されていったはずの「メールを毎日送り合った2年間」はカットされてるし、2年ぶりに会ったときも翔也は2年前の神社と同じこと言ってたし、物語の都合上「交際している」ということに疑いようはないのだけれど、描写がないんです。

 今日の、結ちゃんが1週間分の献立を作ってきて翔也に手渡すシーン。受け取った翔也はその充実した内容に大いに感心するし「助かる」と口にするけど、好きな人がここまでやってくれたら、まず「ありがとう」「やっぱり大好き」って気持ちが先にくるものじゃないのかね。目の前にその好きな人がいるんだぜ、思わず抱きしめたくなるもんじゃないのかね。