2001年から始まった「プロ野球12球団合同トライアウト」が曲がり角に差し掛かっている――。

 今年は11月14日にZOZOマリンスタジアムで行われたが、参加者は近年最小の45人どまり、スタンドに駆けつけたプロ野球関係者の中には欠席した球団もあったほどだった。

 では、なぜ右肩下がりになっているのだろうか。かつてトライアウトに出場経験があるプロ野球OBが語る。

「昔は戦力外となってもどの球団がいつ、どこで入団テストを受けさせてもらうのか選手側にはなかなか情報が降りてこなかった。2001年から始まった合同トライアウトは期日がはっきりした上、当初は年2回あったので一度目は参加しなくても二度目に出て結果を残せばいいという参加方法もあったのです。それが年一度に減り、さらには二軍戦がネット配信中継されることで、一軍に出ていない余剰戦力の把握をどの球団も容易にできるようになってしまった。トライアウトは選手の動きを確認できる場であることに今も変わりはないが、以前のようにその日の成績で獲得を検討するというのは完全になくなりましたね」

 選手側も“野球人生の区切り”をつける場として活用する人が増えた。

「トライアウトの場に両親、妻、子どもたちを呼んで最後の晴れ舞台を……という考えが浸透したことが大きい。ただ主催する日本野球機構(NPB)にはそんな発想は全くなかったので“トライアウトは不要”と判断し、今年限りでの廃止する案を出してきているほどです。以前は2021年、2022年にベルーナドームで『PERSOL THE LAST GAME』と銘打った引退を決めた選手たちが集うイベントもありましたが、こちらも昨年からは開催されなくなった」

 TBS系で長年放送されている人気特番『プロ野球 戦力外通告』に出演する者や家族も、トライアウトが行われる球場に来ることが多いがこの番組も近年は不評だという。

 実際に番組側からオファーを受けた経験があるセ・リーグ球団OBは「お涙頂戴の演出がセカンドキャリアに影響が出たと言う先輩がいたので、(出演は)お断りした。個人情報を世間にさらすリスクが年々高くなる中で家族全員の名前、顔をテレビにさらすほど怖いものはない。著名な選手でさえ出演ギャラは100万円に満たないと聞いていますから、金銭的メリットもあまり感じない。今後はタダ乗りを続けてきたTBSが自らイベントを企画して『プロ野球卒業式』をやっていく番になると思いますよ」と皮肉りながら語る。