◆宏樹の車の“ナンバー”が皮肉すぎる
かつて冬月の子か夫・宏樹の子かわからないままに妊娠を継続させ、娘が産まれてからも冬月への思いを消せなかった美羽は、たびたび夜中に寝室を抜け出して、ひとり思い煩っていた。出産し、夫が徐々に変わっていき、美羽は冬月にきっぱり別れを告げて今の幸せを手にした。だがその代わり、今度は、宏樹がひとり思い悩むことになった。ある晩、美羽が目を覚ますと、隣に宏樹がいない。ベビーベッドの栞もいない。
美羽は妊娠がわかったとき、宏樹に「あなたの子よ」と告げた。あれは自らにも言い聞かせた言葉だったのだろう。
海辺に1台の車。ナンバーは「1188」。いいパパなのか、いい母なのか。いずれにしても皮肉な番号である。宏樹は栞を道連れに……?
<文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio