街でハロウィンの装飾や仮装グッズを見かける季節になりましたが、日本で“怖い話”が盛り上がるのはやはり「夏」。今年も『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2022』や『世にも奇妙な物語 '22夏の特別編』(ともにフジテレビ系)などがSNS界隈を賑わせていました。
筆者は人一倍怖がりな性格ということもあって、ホラー作品は絶対見ないようにしていますし、霊感体質でもありません。けれども、そんな私でも夏になると必ず思い出す「奇妙な体験」をしたことがあります。
◆なんで? 家にいないはずの兄がベッドの上に
それは、私が10代だった頃、都内の実家で経験しました。
当時学生だった私の兄は、夏休みに沖縄のビーチでアルバイトをしていたため、約1か月間ほど実家にいませんでした。そのとき、まだ実家で暮らしていた姉と「沖縄のきれいな海を見ながらバイトできるなんてうらやましいよね!」と話していたものです。
その姉がある夜、奇妙なことを言い始めました。家にいるはずがない兄を「部屋で見た」というのです。
姉によると、兄の部屋の前を通ったときに、人の気配を感じたのだとか。「あれ? 誰もいないはずなのに何か変だな」と思い、部屋の中をのぞいてみたところ、ベッドの上で兄が寝ころんでいたそうです。
◆霊感の強い姉が「妙なことを言っている」と思っていた
これはもう何十年も前の出来事ですが、その時の情景は今でもはっきり覚えています。
私と両親が1階の居間で話していたとき、血相を変えて2階からおりてきた姉。すごく驚いた様子で「○○(兄の名前)が部屋にいるみたいだけど、沖縄から帰ってきたんだっけ?」と私たちに話しかけてきました。
私と両親は顔を見合わせ、「え?! まだ帰って来てないはずだけど…気のせいでしょ」と答えて、その後すぐに他の話題にうつりました。兄が帰ってくるのはだいぶ先のことだったし、姉以外で兄の姿を見たり、気配を感じたりした家族はいなかったからです。
また、姉は普段から「金縛りにあった」「枕もとに誰かいた」などと言うことが多かったので、「また妙なことを言ってるぞ」と軽く受け流していたのです。
◆「海で死にかけた」兄から聞かされた衝撃事実
けれども、兄が沖縄から帰ってきた後、衝撃の事実が明らかになりました。本人の口から「海で一度死にそうになった」と聞かされたのです。「ある日、海でマリンスポーツをしていたとき、沖に流されてしまって、必死で戻ろうとしたものの溺れそうになった。もうダメだ…と力尽きた瞬間に救助された」という話でした。
私たちが驚いたのは、兄が溺れそうになったときと、姉が「部屋で見た」と言っていたタイミングがほぼ重なっていたことです。
幸いにも兄は無事だったので、死後に霊や魂が家に戻ってきたわけでもなければ、いわゆる心霊現象が起きたわけでもありません。どちらかというと「虫の知らせ」に近いと思うのですが、霊感が強い姉だけが異変を察知し、他の家族は誰一人として何も感じなかったというのが不気味です。
それに、部屋で兄を見たのであれば、「帰ってきたの?」と話しかけてもよさそうなものですが、姉は逃げるように立ち去った。やはりその光景は異様だったのでしょう。
◆世の中には常識では考えられない現象が存在する
私自身は霊的なものを見たことはありませんが、姉以外にも、怪奇現象を体験している知人や友人は少なくありません。実際、一緒に旅行した友人が、ホテルの部屋にいるときに「なんか変な気配を感じる。誰かに見られている」と言い出したことがありました。また、遊園地のお化け屋敷に入った後、「連れてきちゃったかな~。なんか体が重い」と訴えた人も…。
「おばけなんてないさ」。臆病な私は、怖い話を見たり聞いたりした後、冗談抜きでこの歌を心の中で何回も唱えています。心霊写真を見たとしても「きっとカメラの調子がおかしかったからだ」と考え、非科学的なことはあまり信じないタイプです。
とはいえ、毎年夏の終わりになると、何十年も前に起きたこの出来事をいまだに思い出します。そして、そのたびに、世の中には常識では考えられない現象が存在するのだと思い知らされるのです。
―シリーズ「怪談・ゾッとする話/不思議な話」―
<文/青山文 イラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust>
【青山文】
某放送局に勤務していたとき、いきなり思い立ってヨーロッパに語学留学。帰国後はウェブ業界に入り、現在は主に海外ニュースの記事を編集&執筆。ときどき話題の商品レビューや子育てにまつわる失敗談なども書いています。反抗期真っ盛りの小学生の息子と日々格闘中。