2020年にアイヌをテーマとしたナショナルセンター「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がオープンした白老町。古くからアイヌの人々が多い地域であり、暮らしに根ざしたアイヌ文化を感じられるスポットも町内にたくさんあります。現代に継承されるアイヌの伝統文化を見て・ふれて・体験できる施設、地元の人々とふれあいながら白老の魅力を味わえるお店などをご紹介します。
1 ウポポイ(民族共生象徴空間)
アイヌ民族の歴史と文化を体感
2020年7月にオープンしたアイヌ文化の発信拠点。ポロト湖に面した広大な敷地に、先住民族アイヌの歴史と文化を主題とする日本初の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」、体験型フィールドミュージアム「国立民族共生公園」、アイヌの方々の慰霊施設などが整備されています。国立アイヌ民族博物館には歴史的資料に加え、現代の工芸家などによる復元資料も多数展示されており、見応えがあります。博物館1階のミュージアムショップやエントランス棟のショップでは、アイヌ工芸品やウポポイオリジナルグッズなどが販売。他にはないお土産が手に入ります。
「ウポポイ」はアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」。多様な人々が共生できる社会への願いが込められています。
広大な敷地内にはアイヌ民族の伝統的な生活様式や芸能を体験できる施設も多数点在。アイヌ古式舞踊の鑑賞や工芸家による製作実演、アイヌ料理の調理体験など、ここでしか味わえない体験ができます。なお、ウポポイの入場と国立アイヌ民族博物館の観覧にはそれぞれ予約が必要な他、体験プログラムも整理券や別途料金が必要な場合があります。事前に公式ホームページを確認することをおすすめします。
ご当地サポーターコメント
4〜10月の土・日・祝(8月13〜28日は毎日)、19:00から開催する屋外プロジェクションマッピングショー「カムイシンフォニア」は、アイヌに伝わる創世神話をモチーフとするナイトプログラム。音と映像、光が織りなす華やかなステージは必見です。
ウポポイ(民族共生象徴空間)
北海道白老郡白老町若草町2丁目3
JR白老駅から徒歩約10分
9:00〜18:00(時期により閉園時間の変動あり)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日以降の平日休み)、年末年始
大人1,200円、高校生600円、中学生以下無料
0144-82-3914
Ⓟ:有料
入場は事前予約制。公式ホームページから「ウポポイ入場券」の購入および「博物館入場整理券」の日時予約が可能。
2 Rempei Mizuno
気鋭のアイヌ伝統工芸家が営む工房兼ギャラリー
2011年に史上最年少でアイヌ伝統工芸家に認定された水野練平氏の工房兼ギャラリー。木材や彫刻刀が並ぶ製作現場とともに、アイヌ民族の生活道具であるイタやマキリ(小刀)などの作品を見ることができます。緻密で繊細な文様、煤(すす)と油で仕上げた味わい深いテクスチャーはアイヌ伝統のスタイル。「人に見せるためではなく、自分で使う道具に美しい文様を施すアイヌ民族の感性に惹かれる」と水野氏はいいます。昔ながらの手法を貫き、現代的なアレンジを行わないにも関わらず、自ずと宿る作り手の魂が、現代人の心をとらえてやみません。
イタで運ばれるコーヒーと気さくな会話を楽しむ
ギャラリーは、町内在住のモルタル造形作家・和田正樹氏とのコラボレーションから生まれたアーティスティックな空間。エゾシカやオオワシの剥製と木彫工芸がしっくりと調和し、不思議と心が落ち着きます。ギャラリーにはカフェも併設されており、コーヒーやビールなどがイタに載せて提供されます。水野氏の作品を入手するには注文から約1年かかるそうですが、木彫のコースターやピンバッジなどの小物類はその場で購入可能。気さくな水野氏とおしゃべりしながら、世界でひとつだけのお土産を選ぶのも楽しいものです。
ご当地サポーターコメント
一杯ずつハンドドリップで淹れるコーヒーは専門店に引けを取らないおいしさ。タイミングが合えば水野さんの手で淹れたコーヒーをいただけます。
Rempei Mizuno
北海道白老郡白老町東町2丁目4-8
JR白老駅から徒歩約6分
13:00〜17:00
定休日:月曜
Ⓟ:無料
3 かふぇ ピラサレ
アイヌの人々に受け継がれる母の味に舌鼓
一般社団法人 白老アイヌ協会が2019年に開設したアイヌ文化発信カフェ。ランチタイムにはアイヌの伝統食「オハウ」を味わうことができます。オハウはそれぞれの土地で手に入るエゾシカや魚、山菜、野菜などを煮込んで塩で味付けした汁物で、北海道の郷土料理「三平汁」のルーツともいわれています。ピラサレのオハウは、地元産の鮭の大きな切り身と、ジャガイモやニンジン、ダイコン、ゴボウなどの根菜を煮崩れないよう丁寧に調理した一品。これぞ母の味という優しい味わいとボリューム満点の食べ応えに、おなかも心も大満足です。
アイヌの人々に受け継がれてきた伝統文化を発信
「ピラサレ」はアイヌ語で「広げよう」という意味。アイヌ文化を核として人々の輪が広がっていくことへの願いが込められています。アイヌ民族の衣装やゴザが飾られた店内は、ほのぼのとした雰囲気。アイヌの人々が飲んでいた薬草茶「エント茶」が無料で振る舞われ、ゆったりとくつろげます。白老町内のアイヌ刺繍サークルの方々が製作した刺繍小物や木彫工芸作品などの展示販売コーナーもあり、アイヌの人々の生活に根ざした手仕事を垣間見ることができます。
ご当地サポーターコメント
店が混んでいない時には、スタッフの皆さんからアイヌの伝統食や手仕事にまつわるお話を聞くことできますよ。気軽に声をかけてみてくださいね。
かふぇ ピラサレ
北海道白老郡白老町本町1丁目1-1
白老町コミュニティセンター1階
JR白老駅から徒歩約8分
10:00〜13:30
定休日:月・土・日曜、祝日
090-1384-0141
Ⓟ:無料
4 荒井工芸館
圧倒的な独創性がみなぎる唯一無二の世界観
白老町内で随一のラインナップを誇る創作木彫専門店です。先代は戦後まもなく旅館や割烹、民芸品商社などを手広く運営。父から事業を継承した荒井修二氏は、独学で木彫技術を会得したそうです。その作風は、アフリカンアートのような生命力とアイヌアートのような緻密さが混じり合い、自由闊達で独創性にあふれています。木と向き合い、頭に浮かんだイメージをデッサンなしで彫り上げるのが荒井氏のスタイル。だからこそ一つとして同じ作品はなく、それぞれが魂を宿しているかのような神秘的なパワーを感じさせます。
アイヌの人々とともに歩んだ歴史が随所に
先代の頃からアイヌ民族の木彫師を雇い、観光土産の木彫熊やニポポ(人形)を製作していた荒井工芸館。白老の地に根ざしたアイヌ文化を尊重し、分け隔てなく接する姿勢に、アイヌの人々は深い信頼を寄せていたそうです。同館では現在も荒井氏の作品の他、アイヌの人々が製作した木彫作品を多数販売しています。作り手によって異なる熊の毛並みやニポポの表情など、一つひとつじっくり見ていると時間を忘れてしまいそう。民族を超えた木彫への情熱が渦巻く空間は、それ自体が唯一無二の作品といえるかもしれません。
ご当地サポーターコメント
エントランスから店内へ続く独創的な手彫りの扉も荒井氏の作品。まさに異空間への入り口です。
荒井工芸館
北海道白老郡白老町大町3丁目3-26
JR白老駅から徒歩約4分
10:00〜16:00(変動の可能性あり)
定休日:年末年始
0144-82-2823
Ⓟ:無料
5 しらおいイオル事務所チキサニ
アイヌ伝統の生活空間を学べる体験プログラムが多数
自然と共生していたアイヌの人々のイオル(伝統的生活空間)の再生に向けて、アイヌの伝統や文化を伝える体験交流施設。「チキサニ」はハルニレの木を意味するアイヌ語です。チキサニでは、1年を通して海・川・山それぞれのイオルに基づくさまざまな体験プログラムを実施。アイヌ文化にゆかりのある山菜の採取・調理・試食体験、アイヌの伝統的な道具を使って鮭を獲る「マレㇰ漁」体験、「チェㇷ゚ケㇼ」と呼ばれる鮭皮靴の製作体験など、アイヌの人々の伝統的な生活を体験できる機会が用意されています。
見て・ふれて・感じるアイヌ文化の奥深さ
施設内には、白老町内の方々が製作したアイヌ工芸品や復元された伝統的な丸木舟、アイヌ文化と深い関わりのある植物などが展示されています。アイヌ関連図書やDVDなどの資料も充実しており、コンパクトな空間に密度の濃い情報がぎっしりと詰まっています。 チキサニでは、今後も自然との共生をより実感してもらう取り組みを行っていく予定。例えば、植物の種まきから採取、加工、手工芸品の制作までを体感できる息の長いプログラムも構想中だそうです。体験プログラムは事前予約制。詳しくは電話にてお問い合わせください。
しらおいイオル事務所チキサニ
北海道白老郡白老町末広町2丁目6-4
JR白老駅から徒歩約14分
9:00〜16:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休み)、年末年始
0144-82-6301
Ⓟ:無料
体験プログラムは電話にて事前予約が必要
6 しらおいチャレンジショップ
白老に息づくアイヌ工芸の魅力を発信
白老町の公募で選ばれた地元事業者が、白老の魅力発信に取り組むチャレンジショップ。「ウポポイ」の近くにある観光案内所「ポロトミンタラ」に隣接する建物で、2022年春から3つのお店が営業をスタートしました。そのひとつ「pon epere(ポンエペレ)」では、町内でアイヌ工芸に携わる人々が製作した雑貨を販売。アイヌの伝統的なゴザや編袋、美しいタマサイなども並んでおり、ウポポイの後に訪れた人々は「国立アイヌ民族博物館で観たものにここで出合えるとは」と驚かれるそうです。
美しいアイヌ文様を日常使いで楽しむアイテムも充実
アイヌ文様をあしらったトートバッグやコースター、Tシャツ、アクセサリーなど、日常の暮らしの中でアイヌ文様の美しさを楽しめるアイテムも多数ラインナップ。廃業した民芸品店の倉庫から見つかった古い木彫工芸品をリメイクしたキーホルダーなどもあり、他にはないお土産を探したい方にもぴったりです。しらおいチャレンジショップはポンエペレの他、白老牛の胎盤から抽出したプラセンタを使った美容液や海産物などを販売する「白老プラセンタ」、ペットと一緒に利用できるエステサロン「KINKA」が出店しています。
ご当地サポーターコメント
しらおいチャレンジショップに隣接する「ポロトミンタラ」には白老町内の観光情報コーナーや物産ショップもあり、休憩がてら立ち寄るのにぴったり。外には遊具や蒸気機関車の展示もあるので、子ども連れにもおすすめです。
しらおいチャレンジショップ
北海道白老郡白老町若草町1丁目1
JR白老駅から徒歩約4分
10:00〜17:00
定休日:月曜
ポンエペレ:090-9515-3327
白老プラセンタ:080-1976-6433
KINKA:090-6264-5882
Ⓟ:無料
7 Rana Pirica(ラナ ピリカ)
白老在住のハンドメイド作家の個性あふれる作品がずらり
「白老のいいもの発信!」をコンセプトに、町内で活動している作家を中心としたハンドメイド雑貨などを販売するカフェ。伝統的なアイヌ刺繍を施した着物やタペストリーなどの大作から、アイヌ文様を現代風にアレンジした刺繍小物や陶芸品、繊細な手彫りのアクセサリーなどの雑貨まで、多種多彩なアイテムが並びます。一つひとつ眺めていると、アイヌ民族の歴史に培われた手仕事が、世代を超えて白老の日常にしっかりと根を下ろしていることがよくわかります。
気さくなオーナーのもとに自然と人が集まる空間
知人から譲り受けたというアイヌ民族の着物やゴザ、木彫熊やアンティーク雑貨などが飾られたカフェスペースは、中国茶やコーヒー、ランチメニューも充実。気さくなオーナーとのおしゃべりを楽しみながらくつろぐ人々の姿に、このお店が地元で広く愛されていることが伺えます。「ラナピリカ」はアイヌ語に似た響きですが、オーナーが大好きなエゾアカガエルの学名とのこと。「白老ではアイヌ文化は昔から身近にあるもの。アイヌ民芸・工芸の作品もそれ以外も含め、白老のいいものを紹介したい」というオーナーの思いにふさわしい店名といえそうです。
ご当地サポーターコメント
コーヒーは白老町内で40年以上続く「はしもと珈琲館」の自家焙煎豆を使用した本格的な味わい。白老のものづくりの魅力にふれながら、ゆったりとした時間を過ごせます。
Rana Pirica(ラナ ピリカ)
北海道白老郡白老町大町2丁目1-4
JR白老駅から徒歩約6分
10:00〜16:30
定休日:月・日曜、祝日(臨時休業あり)
0144-61-1733
Ⓟ:無し
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記事公開:2022/08/22
提供・星野リゾート みちくさガイド
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