現在は芸能界最大の業界団体である一般社団法人「日本音楽事業者協会」の理事も務めるなど、芸能界でも広く知られた存在である山本氏も関わった『がんばれ!! タブチくん!!』だが、当初は別の作品の製作費の補填を目的に作られたという。
当時を知る映画業界関係者はこう明かす。
「元々、山本氏はジュリーこと沢田研二を主演に起用した映画『太陽を盗んだ男』(79年公開)をヒット作にしようと意気込んでいた。ところが、製作費がどんどんかさんだことで、確実にヒットが見込める別の作品を並行して作り、その収益で同映画の費用を賄おうと考えた。それが『がんばれ!! タブチくん!!』だったわけです」
『太陽を盗んだ男』は沢田演じる主人公のさえない理科教師が、自ら製造した原子爆弾で政府を脅迫する男の孤独な闘いを鋭い風刺とパワフルな演出で描き、現在もカルト的人気を誇る異色のアクション映画だ。
もっとも、日本を代表するグループ・サウンズのザ・タイガースを経て、当時ソロ歌手として絶大な人気を誇った沢田を主演に据えたものの映画ファンには受け入れられず、興行収入は惨敗に終わる。
「後に、山本氏はインタビューで“『がんばれ!! タブチくん!!』がなかったら、『太陽を盗んだ男』の製作で僕は億を超える負債を背負い込み、立ち上がれなかったかも知れない”と振り返っている。そんなヒット作の主演を張った西田さんは山本氏にとっても恩人と言える存在でしょうし、後に『トライストーン・エンタテイメント』を設立することもなかったかもしれません」(同映画業界関係者)
山本氏から同社の社長の座を受け継いだ小栗も、天国の西田さんに感謝しているはずだ。