自分も頑張り、そして周りも一緒に頑張って、組織そのものが向上していくことこそが、ビジネスモデルとして理想的な姿では無いのではないかとも今では思えるのですが。当時の私はとにかく、頼っていただければそれが無性に嬉しくて、その期待に応えなくてはと無駄に空回りしていた記憶があります。
私が現役のアナウンサーだった頃にやらなかったことで、反省していること。それは、他局のさまざまなアナウンサーの方の仕事の様子をテレビやラジオできちんと研究しなかったことです。
物理的に時間がなかったのもあるかもしれませんが、チェックするのはいつも自局ものが中心。他局のアナウンサーがどういった話し方をしているのか、どういった見せ方をしているのか、しっかりと勉強しなかったのです。これはやるべきだった。
◆TBS退社後に初めて気づいたこと
以前こちらの連載でも書かせていただいたのですが、テレビ局退社後、NHKラジオをしっかりと自宅で聞く機会に恵まれて、そこで「アナウンサーの仕事ってこうだよなあ」なんて初めて気づいたことがあったのです。
NHKラジオ「すっぴん」の藤井彩子アナウンサーも素晴らしかったですし、昼ニュースを伝えるベテランの男性アナウンサー陣の姿からも学ぶことが多くありました。現役時代の私は、とにかく面白くしようとか、人とは違うような爪痕を残したいとか、そういった雑念が多くあったなあとつくづく感じるのです。
アナウンサーとしての安定感やら安心感、また正確さに、きちんと向き合っていたのだろうかと反省することが多くありました。
いちリスナーとしてNHKラジオを聴いていても、淡々とお伝えする中に時おり知性や個性が浮かび上がってきて、それが聴取者として心地良いんですよね。人生において積み上げてきたものは、こういった形でうっすら垣間見えるものなんだなぁなんてことを痛感したのです。