◆美羽が冬月に、意外なほど執着する理由は
結婚以来、初めて満たされた思いで幸せな日々を送る美羽。そう、あの人さえ現れなければ……。だが、再会してしまうのだ。実は生きていた冬月に。
もともと美羽が中学生時代にそこまで冬月を好きだった、という表現があまりされていないので、「美羽が冬月にそこまで執着するのがわからない」といったSNSでの書き込みも目立つ。私自身もそう思っていたのだが、もしかしたらどうやら過酷だったらしい美羽の家庭環境の中で、冬月はたった一筋の希望だったのかもしれない。
つらいことを心の底にしまいこんだ美羽が、再会してパンドラの筺(はこ)が開き、中学生のとき以上に、冬月に並々ならぬ愛着と執着を高まらせたとしても不思議はない。
◆“托卵”の三角関係に、大きく関わる二人の女性
そしてそんな美羽と宏樹と冬月の関係において、鍵になりそうなのが、美羽の親友・真琴(恒松祐里)と、冬月とともに仕事をし、彼に思いを寄せている莉紗(さとうほなみ)だ。
真琴はシングルマザーで、真琴とその息子との関係を見て、美羽は子どもがいればたとえ夫に冷たくされても生きる意味が見いだせるかもしれないとかつて考えたこともあった。年下だがしっかりしていて、なにくれとなく相談に乗ってくれたのが真琴だから、美羽は全面的に信頼しているのだが、真琴はどうやら宏樹に心惹かれている。
莉紗は、冬月に思いを告げられないままだ。アフリカで亡くなったのは、冬月ではなくもうひとりの仲間・下原(持田将史)だった。なのに彼女は下原の遺体を冬月だと断言してしまったためにニュースで冬月が亡くなったと報じられたのだ。莉紗の心の奥では、ここで冬月が亡くなったとすることで、逆に冬月を自分のものにしてしまいたいという気持ちがあったのかもしれない。
◆優しくなった夫を裏切ることなどできない
美羽はすっかり変わった宏樹の提案で、娘を連れてドライブに出かける。その途中で、冬月に再会した思い出の図書館に寄ってもらい、足を踏み入れる。そしてそこで冬月にばったり会う。冬月は思わず美羽を抱きしめるが、美羽は逃げるように宏樹のもとへ戻る。