ある日、洗面所の鏡をのぞき込んでギョッとしました。そこにいたのは老いた父にそっくりのわたし。痩せこけて、白髪の五分刈り。自分の姿から「女性らしさ」みたいなものがまったく感じられませんでした。
そんな姿にゾゾっと背筋が寒くなり「このままじゃいかん」とその足でドラッグストアに走り、白髪染めをゲット。長い髪だと自分で染めるのは手間がかかりますが、五分刈りなのでざっと塗れば仕上がる。今すぐに染めようとお風呂を沸かし、洗面所で白髪染めを塗りたくりました。
ばっちり髪を染め上げたお風呂上がりのわたしは、さっきの「老いた父」状態よりもずいぶんいい感じに見えました。お風呂上がりで少し顔色が良くなったせいもあるかもしれません。白髪がなくなった自分を鏡で見て「あっ、生き返った」と思いました。
自分でも予想しないほどに「ふわっ」といい気分が心の底から持ち上がってくるのを感じたのです。毎日鏡で不健康そうな自分を見るたび「もうどうでもいいや」とおしゃれをする気さえ失せていたわたしですが、この日を機に、もう少しおしゃれしたいなと思うようになりました。
◆偶然見つけたオレンジ色のスカート
もともと洋服好きでしたが思い返せば、メンタル不調になってからは、服を選ぶ気力もなくなっていました。外出の際には、何年か前に買ったシワにならなさそうな服を毎回着ていました。靴も毎回同じ黒いスニーカー。けれどこの白髪染めの一件以来、なんとなく素敵な服が着たいと思うようになりました。
ある日、通りすがりのお店で、ハッとするようなオレンジ色のスカートがウインドウにディスプレイされているのを見つけて、吸い寄せられるように店内へ。「思い切り明るい色の服が着たい」と思い、そのオレンジのスカートを試着。スカートに合わせた明るい柄のストールも巻き、鏡に映った自分を見てまた「うわぁ、いいかも」と気持ちが明るくなり、そのスカートを購入しました。