◆ヤマンバから大量の屋台グルメを投げつけられたけど…
「彼女は、その手に大量のタコ焼きや焼きそば、じゃがバターなんかを抱えて、血走った瞳で私たちを見ていました。たぶん、もともとはキレイに着つけられていたんでしょうけど、浴衣も半分はだけちゃっていて。人ごみの中で買うのにそうとう苦労したんでしょう。髪もザンバラで、ハッキリ言って山姥(やまんば)みたいでした。
そして軽く抱き合っていた私と彼をニラみつけて『女に買い物させて浮気してんじゃないわよ!』と怒鳴り、大量の屋台グルメなんかを全力で投げつけて去っていったのです」
コントのように焼きそばが頭に乗っかったFくんと、バターで顔がテカテカになったN子さん。
どうやらFくんは、今の彼女に屋台を回らせており、待っている合間にN子さんとイチャついていた模様です。これは、普通に女性だったらドン引きの状況ですよね。二股、許すまじ! となるところです。ところがN子さんは……
◆身体を洗いにホテルへ。その後ヨリを戻して結婚
「『あ~私はしょせん、浮気の相手だったのか~』とちょっとガッカリしたんですけどね。にっちもさっちもいかないこの状況をどうにかしなきゃって気持ちが先に立って。気が付いたら、ホテルでシャワーを浴びていました」
身体を洗うという名目で、すんなりホテルに直行してしまった2人。そしてお互いに純情を捧げた18年前のデートリバイバルのような形で、がっつりと一夜をともにしてしまったのです。
「そして、それがきっかけで彼とはヨリを戻すことになり、去年入籍をしました。ただ、何となくあの一件はトラウマになってしまって……。彼には絶対に、ひとりで夏祭りに行くことがないよう、この時期は厳しく監視をしています」
N子さん、今度は自分が屋台グルメを投げつける側にならないよう、お気をつけて……。
―シリーズ 夏の恋愛エピソード vol.13―
<文/もちづき千代子 イラスト/鈴木詩子>