そして最終回、南くんは自らの姿を周囲にさらしていくことになります。ちよみの親友の女子やバスケ部のチームメイトに直接遺言を伝えると、大好きなちよみの家族とともに最期のときを過ごすことにした南くん。家族たちは、努めて明るく振る舞う南くんとちよみに大切なことを語り出します。
「不幸な亡くなり方をする人は、どうしてもいる。でも、その人の人生をかわいそうだと思うのはやめよう。幸せな人にしなくちゃいけない。それができるのは、生きてる人たちだ」
南くんとちよみは約束していたお城(ラブホ)で結ばれ、南くんは姿を消すのでした。というお話。
■30年越しのリベンジ
言いたいことを言い切ったな、と思いました。30年前、『南くんの恋人』では最終回にちっちゃくなったちよみが死んだことで「かわいそうだろ」というクレームが殺到し、別撮りで中途半端な「ちよみ復活劇」が放送されました。
その『南くん』をリメイクした今回、岡田先生は言いたいことを言い切ったと思います。複雑な人物配置、ドラマそのものの思想を司る「大先生(加賀まりこ)」というキャラクターの造形、軽妙な会話。それは30年のキャリアの中で岡田先生が培ってきた技術に裏付けされた、実にスマートな作劇だったと思います。駆け出しの若手2人を主役に据え、きらびやかな大御所で脇を固めるキャスティングも盤石でした。
8話完結のファンタジードラマとして、出来としては非の打ちどころのない作品だったと思います。前にも書いたけど、高橋由美子の『南くんの恋人』は現在でも通じるエポックな存在であって、そのセルフリメイク作品である今作は間違いなく日本のドラマ史の1ページだった。ドラマを見る人にとっては制作されたこと自体が喜ばしい事実だし、そうした期待に存分に応えてくれた作品だったと思います。視聴率のことは知らんけど。
■でもそんなことより
でも、そんなことより。ドラマというのは作品と視聴者の間にあるもので、視聴者のそのときの環境や状況も、受け取り方に大きく影響するものなんですよね。