イーライ・ロス監督最新作で恐怖と痛みを味わおう
12月29日(金)、最新ホラー映画『サンクスギビング』が公開となった。この記事では今作をレビュー、魅力を紹介していく。
『サンクスギビング』あらすじ
感謝祭(サンクスギビング)発祥の地マサチューセッツ州プリマス。感謝祭翌日に行われる“ブラックフライデー”のセールに人々が大型量販店に押し寄せ、暴動に発展する事件が発生。
その1年後、再び感謝祭シーズンで盛り上がる町で、人々は残虐な方法で次々に命を奪われていく。
昨年の暴動事件で現場にいたジェシカたち地元の高校の仲良しグループは、“ジョン・カーヴァー”を名乗る謎のインスタグラムのアカウントにタグ付け投稿され、その投稿には豪華な食卓と、彼らひとりひとりの名札が用意されていた…。
ジョン・カーヴァーの正体とは?そして狙われた彼らの運命は…?
イーライ・ロス節、大爆発!
今作は『ホステル(2005)』『グリーン・インフェルノ(2013)』などで知られるイーライ・ロス監督の最新作。
クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスによる2本立て映画『グラインドハウス(2007)』に、ロス監督が友人として“実在しない予告編”として提供したネタを本当に映画化した作品だ。
過去にも過激なスプラッタ描写で人々からカルト的な人気を得てきたロス監督が、今作でも“バイオレンスな遊び心”を爆発させ、「そんな死に方って…!」という驚愕の描写の数々を披露している。過激さに顔を覆いながら、目と目の隙間から覗いて爆笑してしまうような、恐怖とエンタメの融合がホラーファンには心地良い。
とどまるところを知らないグロテスクな描写ながら、やはりそこにはロス監督の“無邪気な遊び心”“旺盛なサービス精神”があり、世に大量に存在するスプラッタ映画の中でも群を抜いた“匠”を感じる1作だ。
スプラッタファンの皆様はぜひ、そのバリエーションに富んだ残虐描写を目に焼きつけていただきたい。
「祝日」って何だっけ?
今、人々は「祝日」に「祝うべきもの」を祝っているだろうか。勤労感謝の日に労働者たちへの感謝を捧げているか。敬老の日に老人を労っているか。(筆者も含めて)現代を生きる人々には、「祝日」を「ラッキーなお休み」として捉えて過ごしてしまっている人が多いと思う。
もちろんそれが悪いとまでは言わないが、今作の「感謝祭(サンクスギビング)」を含め、祝日は人々が身体を休めるだけでなく、周囲の人々や命の恵みへの感謝を感じるきっかけとしても存在しているはず。
そんな中、量販店のセールに群がって人々が揉み合い罵倒し合ったり、自分たちの“バズり”のことばかり考えて周囲を顧みない行動に出たりするのは、「祝日を忘れている」どころか正反対の姿勢ではないだろうか。
それが命を奪われるに値するほどの罪かどうかはさておき、今作はそういった“周囲への感謝・尊敬を忘れた人々”が酷い目に遭っていく様をとおして、祝日の本懐(ほんかい)を忘れた人々へ「このままではいけない」と警鐘を鳴らしているようにも見える。
クリスマスからお正月まで、年末年始シーズンにはプライベートな時間を確保できる人々も多いだろう。この恐怖をきっかけに、「周りの人々への感謝を改めて示そう」と思うのもいいかもしれない。
『サンクスギビング』は本日12月29日(金)より公開中。