◆日本に生産工場がなくなったら、同時に技術も失う
これを読んで思い出したことがあります。
それは私がアパレルメーカーで働いていた2000年より前のこと。国内に自社工場を持つメーカーであるにもかかわらず、名だたる商社の営業マンが中国生産の営業をかけにブランドがあるフロアによく訪れていました。
たぶんこのころから日本国内から人件費が安い海外へ生産拠点が移り始めたのでしょう。アルマーニのスーツにブルガリの腕時計の30代の男性商社マンが、わかばのたい焼きを持って、18時を過ぎてから、中国の工場に依頼することを決めた私たちのブランドのところにやってきた光景を、今でもよく覚えています。
あのときの未来が今ここです。海外生産と日本生産の比率は逆転しました。
日本に生産工場がなくなったら、同時に技術も失います。失うのは簡単ですが、取り返すのには何十倍もの時間と労力がかかります。
決して安くはないメリノウール製品ですが、買う人がいなければ、その技術は消失します。よきものを残すためにも、そしてもちろん自分の日常の快適さのためにも、少しずつ買い足していきたいなと考えています。