◆早めのカウンセリングが効果的な理由

――カウンセリングを受けて、ノダDさんが一番大きく変わったのはどこだったのでしょうか?

水谷:イライラしたり腹が立ったときに、夫が自分で何が原因なのか考えられるようになったのが大きな変化だと思います。以前は不快だと感じたら、「俺は正しい」と思って怒りを撒き散らしていたのが、カウンセリングで行動には心の中に理由があることを教えてもらって「怒っても意味がない」と分かってくれるようになったし、「怒りが爆発する“何手前”まで戻れば、そうならないで済んだのか」を本人が考えられるようになりました。

――劇的な変化というよりは、ご本人の中で考え方が変化したという感じなのでしょうか?

水谷:カウンセリングを受けたら夫が涙ながらに生い立ちを語ったりする感動的なシーンがあるのかと思ったんですが、なかったです(笑)。ただ、それでも確かに効果がありました。

夫の人間性が変わったのではなく、カウンセリングによって自分の思考パターンを理解したことで、行動に至るまでの道筋を辿れるようになりました。

この漫画を読んで「夫の態度が変わりました」という感想をいただくことがあるのですが、俯瞰的に自分を見る視点を知ると行動を変えられると思います。怒るか怒らないか選べるようになると、「怒らないほうがいいじゃん」と思えるようになるのではないでしょうか。

――本書で、キレたり不機嫌になることと、正しく怒ったり悲しんだりすることは違うと書かれていて非常に納得しました。

水谷:怒ることそのものが悪いわけではなくて、どういう道筋を辿ってどんな選択をするか自分でコントロールすればいいだけの話だと思います。例えばトラブルが起きて不当な扱いをされそうになったときは怒ったほうがいいし、自分を守るために戦わなくてはならないときもあります。悲しむべきときは悲しんだほうがいいんです。

でもそういうときに怒れなかったり悲しめないという人もいるので、自分を守ったり信用される人間になるために、怒りや悲しみの行動を選べたらいいなと思います。

――「問題があると思ったら早めにカウンセリングを受けたほうがいい」と書かれていましたが、夫婦や親子間に愛情が残っているうちに解決するのが大切なのでしょうか。

水谷:うちは早い段階で行ったので、夫婦でカウンセリングを受けるケースの中ではかなり仲が良いほうだったと思います。問題点を共有できていたし、どこを直したいのか明確だったので話がスムーズでした。でも夫婦の片方がずっと我慢していたり、何が問題かも分からない状態で行くと解決までもっと時間がかかると思います。

実際にはもっと問題がこじれて、夫婦関係が壊れる寸前になってからカウンセリングを受ける方が多いかもしれません。

――それを避けるためにはどうすればいいのでしょうか?

水谷:問題があっても我慢してしまう人が多いと思うのですが、我慢と解決は対極にあります。解決するためにはある程度自分たちで問題を整理することが大切なので、「解決したい」という強いモチベーションを持つことが必要だと思います。皆さん我慢するのはやめて、早めにカウンセリングに行ってほしいです!

<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】

ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。