◆「あなたは精神的なDVに遭っている」

 この一件以降、凛子さんの情緒は悪化した。不機嫌のみならず気分のアップダウンが激しくなったのだ。

「死んでほしいという言葉を浴びせてきた5分後に、私を捨てないでと懇願してくるんです。勤務中には毎日のようにLINEが何十件も来ました。『死にたい』『私に関心を持たないで』『私は好きなことをしたい』『あなたに時間と感情を使いたくない』『子供は絶対に欲しい』。もう、めちゃくちゃです」

 定岡さんの精神は次第に疲弊していった。仕事中に動悸が止まらなくなったり、突然涙が出たり。見かねた同僚が心療内科を勧めた。

「医者に凛子のことを洗いざらい話しました。交際中のこと、結婚生活のこと、子供が欲しいと言われたけどセックスを嫌がられていること。すると、あなたは精神的なDVに遭っているからこのまま家に帰らないでください、と言われました」

※写真はイメージです
※写真はイメージです(以下同)
 定岡さんはそこではじめて自覚した。自分は明確に被害者なのだと。ただ、さすがにそのまま家に帰らないわけにはいかない。

「その週末、凛子を刺激しないよう注意深く言いました。体調が悪くてこのままだと君に迷惑をかけてしまう。だから実家にしばらく帰りたいと」

 凛子さんの返事に心配する様子は一切なかった。

「私もひとりのほうが快適だから、構わないよ」