新型コロナウィルス対策のため、10月30日から再ロックダウンに入ったパリ。すでに数週間が経ち、パリジャン達の生活も少し落ち着いてきたような印象です。
ロックダウン中に人気なのが食事のテイクアウト。趣向を凝らしたテイクアウトを各レストランが提供してくれています。今回は、そんなパリのテイクアウト事情をご紹介します。
地域を盛り上げる新システム『クリック&コレクト』
今回のロックダウンでは、カフェやレストラン、スポーツジムなどの閉鎖や映画館、劇場での公演が中止。これは3月から始まった前回のロックダウンと同じですが、これまでと大きく違ったのは小、中、高校が開校しているということ。そして、仕事で必要な外出は認められています。テレワークができない業種の人は、これまでと変わらず出勤しているので、街には結構人が出ている印象です。
そんななか、最近よく耳にするようになったサービスが『クリック&コレクト』。これはネットや電話で注文した商品をお店に直接取りに行くというシステム。ロックダウン中でも必要なものがある場合、大手ネットサービスを介さずに、地元客が地元のお店でいままで通りに買物ができます。地元の街が元気になれる仕組みになっていて、とても好印象です!
高級フレンチも『クリック&コレクト』でお手軽に
なかでも私が注目しているのが『クリック&コレクト』を使ったレストランのテイクアウト。
普段テイクアウトをしていないレストランも、頑張って新しいスタイルに挑戦しています。高級レストランが気楽なランチボックスやアペリティフボックスを提供したり、すっかり料理スタイルまで変えているところもあるんです。
配達サービスも発達しつつありますが、意外なことにレストラン業界ではイマイチのよう。販売価格の30%近くが手数料として徴収されてしまう配達会社もあり、これでは高級レストランにとってあまりメリットがないのだとか。そんな理由もあり“お客様が自分で取りに行くスタイル”が徐々に人気になっているのです。
ロックダウンにより家で過ごす時間が長くなると、ついついルーティーン料理が続いてしまいますよね。料理のレパートリーに飽きていた私も、早速家から歩ける範囲のお店でテイクアウトしてみました!
日本人シェフによる高級ガストロノミーをテイクアウト!
紹介するのはアリーグル市場からほど近いところにある『WILL(ウィル)』というフレンチレストラン。“ビストロガストロノミー”と呼ばれる、料理にこだわりながらも、気軽に入れるビストロです。
このお店では長年フランス各地で修行してきた日本人シェフによる本格フレンチを提供しています。2018年にオープンして以来、地元でも大人気で予約がなかなか取れないお店。ところが11月初旬からテイクアウトを開始したと聞き、気になっていました。
店内はテイクアウト対応用のセッティングになっていて、お客さんがひっきりなしに商品を取りにきているようです。お店から出てきた素敵なパリジェンヌマダムに直撃インタビューしてみたところ…。
「会社がすぐ近くで、大好きなお店なの。普段からよく食べにきているわ」とのこと。この方は近くで会社を経営するマダム。
「ここの料理が恋しくなってテイクアウトしたの。それに、この厳しい時期を乗り越えてほしいと思って、応援の思いも込めて来ているわ。お気に入りのお店がなくなったら寂しいでしょう?」と愛情いっぱいの笑顔で答えてくれました。こういった地元の繋がりが、パリのレストランを支えているのですね。
日本人夫婦の心遣いが素敵なビストロ
さて、私もその日の朝に注文をしておいたので、さっそく取りに行きました。
ドアを開けると「すぐに準備します!」と日本人マダムの声が。こちらのお店では、お料理を最高の状態で提供するため、お客様が食べる時間を逆算して調理してくれます。私が注文した「鴨肉とフォワグラのパリ包み」は、ピックアップの20分前から焼き始め、一度休ませてから中は温かい状態にしてくれていました。
箱に入れられたお料理を袋詰めしてくれているところに、大草真シェフが厨房から登場。とてもほがらかで情熱に満ちたお二人との会話も楽しいひとときです。
ひと手間加えて、おうちでフレンチのフルコース
急いでおうちに帰りお楽しみの食事タイムです。すべての料理には、手作りのソースが添えられていました。ボックスに入った状態でも、充分食欲をそそられる綺麗な盛り付けでしたが、せっかくなのでお皿に装ったり、メインディッシュをオーブンで焼いたりするなどひと手間を加えてみました。
今回オーダーしたメニューは、こちら。
~ 前菜 ~
– 鯛の藁スモークと季節サラダ添え ゆず風味
Dorade Royale fumée au foin et brûlée, salade de saison, Salsifis frits, citron Yuzu
~ メイン ~
– 牛タンのマリネにパニスやほうれん草、ジャガイモの付け合わせ
Langue de boeuf marinée, fumée au foin et grillée, sauce moutarde
-鴨とフォワグラのピチヴィエ(パイ包み) グリーンサラダ添え
Tourte de magret de canard et foie gras, salade verte
伝統的なフレンチの技術をベースにしながらも、ひと工夫をするのが得意な大草シェフの定番料理でもある「鴨とフォワグラのパイ包み」。説明書には「200度のオーブンで5分加熱し、ソースには水を小さじ1入れて温める」と記載されていました。丁寧な心遣いがうれしいですね。
~デザート~
– イチジクの赤ワイン煮を包んだチョコレートケーキ、ショコラクリーム添え
Moelleux au chocolat et compotée de figues au vin rouge
– レモンとトンカのチーズケーキ
Cheesecake onctueux, Tonka, citron
– 抹茶のチーズケーキ、玄米茶風味のサブレ
Cheesecake Matcha, sablé au thé vert Genmaicha
デザートは奥様の綾子さんが担当。有名レストランのシェフパティシエも勤めた綾子さんが作るデザートも欠かせません。
自宅をレストランに変身させるのはちょっと大変でしたが、おいしいお食事のためなら頑張れます!この日は図らずもボジョレーヌーボーの解禁日。しっかり初物を頂きました(笑)。今年は雨が少なく暑い日が多かったので、比較的まろやかな甘みや果実味があり、鴨料理にもピッタリです!
「パリジェンヌはアパルトマンを探すとき、気に入ったパン屋の近くを選ぶ」というくらい、パリの人たちは“食”を大切にしています。近所にこんな素敵なお店があるのも、パリの魅力のひとつ。ビストロ激戦区としても知られるパリ11区が「住みやすい街」と言われるのには、こういう小さなしあわせが近くにあるからなのかもしれませんね。
1月20日まで、しばらくはレストランやカフェはオープンできない状態が続きますが、それまではテイクアウトで“おうちレストラン”を楽しみたいと思います。
まだまだ新型コロナウィルスの影響を受けていますが、みなさんもソーシャルディスタンスを保ちながら、美食で心豊かに過ごすことも忘れずに!
◼️施設情報
WILL
住所:75 Rue Crozatier, 75012 Paris
電話番号: 01 53 17 02 44
※メニューは毎週HPに掲載されます。
提供・PARIS mag(シンプルで上質なライフスタイルを提案するWEBマガジン)
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