「身動きも取れずに寒さ厳しい真夜中の公共公園に、繋がれた老犬を助けることが『窃盗』という不条理は納得できない」「『モノ』だと言うなら『拾得物』として保護する」と、迷わずこの老犬を連れて帰ることにしました。
中村さんはここまで寄り添ってくれた方に深くお礼を言い、この方も保護の快諾を受け、安心した表情で帰っていきました。
◆飼い主からの捜索願いなどは出ていなかった
保護したのは金曜日の夜中だったため、中村さんは週明けの月曜日の朝一番に地元の動物愛護センターに連絡しました。
ワンちゃんの迷子の届けはなかったものの、中村さんは自らの連絡先を伝え「一時保護しているから、もし探しているという飼い主さんが出てきたら連絡を」と依頼。
そして、さらにその翌日には地元の警察署にも出向きました。「迷い犬届が出されていないか」なども確認しましたが、あいにく出ていないとのこと。当初の直感は残念ながら当たってしまったようでした。
◆満足なお世話や愛情を受けてこなかった様子
中村さんはこの年老いたワンチャンに「ジジ」と名前をつけてあげました。体をよく見ると、歯には歯石がビッチリ。爪も伸びっていて、明らかに満足なお世話を受けていない様子でした。
そして、抱っこをしようとすると暴れて噛みつこうとするほどで、老犬になるまで一度も抱っこされたことがないと感じました。
10年前後、飼い主からかわいがってもらえず、満足なケアもされていなかったジジ。中村さんは悲しみと強い憤りが入り混じる複雑な気持ちになりました。
◆さらに念入りな検査・医療処置を経て里親探しへ
のちにジジを動物病院へと連れていき、まずは歯石と去勢手術を実施。ボロボロだった毛も綺麗に丸刈りにしてスッキリしてもらうことにしました。
依然としてジジは助けてくれた中村さんの前でも、笑顔を見せることはありません。それでも中村さんの心が癒されるのは、ジジがベッドを気に入ってくれ、ここでスヤスヤと休んでくれるようになったこと。