30代になり周りの友人が「結婚したい!」と婚活する中で、奈緒子さんは「結婚はゴールではないし、たとえ結婚してうちの親のような夫婦になっても幸せといえるのだろうか?」と考えるようになりました。
「実家に帰る度に母は『結婚しないの?』と聞いてきましたが、父は相変わらずノータッチ。たまに会話したかと思えば母から小言しか言われない父が、果たして娘に結婚を望んでいるのだろうか? 父自身が結婚に幸せを見出してないのではないだろうか? と思うようになり、母から結婚のことを聞かれるたびに『お母さん達のような夫婦になりたくないから……』と、心の中でつぶやいていました」
結婚のことを一切考えなくなった奈緒子さんは、仕事に励むようになったといいます。
「彼氏はできたりできなかったりでしたが、どうせ結婚しないんだからと考えると彼氏に対して執着心がまったく湧かなくなったんです。すると男性の趣味も変わってゆき、常に恋人と一緒にいたい人よりも仕事を第一とする男性を選ぶようになりました。
クリスマスなどのイベントも気にせず、お互い仕事に励んでいたら私のほうも面白いほどキャリアアップしていったのです。気付いたら昇格し、貯金もどんどん増えていきました。このまま、一生結婚せず家を買うのもアリかもしれない……そう思っていた矢先に、母が突然倒れたんです」
◆突然の母の病気、その時に見た両親の絆
「母が倒れたのは不整脈が原因でした。幸い、職場で倒れてすぐに病院に運ばれたので命に別状はなかったのですが、大事をとって入院することになりました。急いで病院に駆け付けると、そこには今まで見たことないほど、うろたえる父の姿があったんです。
母が無事だと分かると父は『本当に良かった……』とつぶやいて、母の手をずっと握っていました」
父親が妻を心配している姿を見たのは初めて目にした奈緒子さん。その時は「戸惑った」というのが正直な気持ちでした。