組織が巨大化していったことで、ディズニーはポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)を強く遵守するようになっていきます。スタッフとのスキンシップを図るために、ハグをすることで有名だったジョン・ラセターは、Me Too運動もあり、2018年末にディズニーを辞めさせられています。枕営業を強要していた元大物プロデューサーのハーベイ・ワインスタインと同列扱いすることに疑問の声もありましたが、ラセターが製作総指揮した『トイ・ストーリー4』(2019年)は、その完成を見届けることなく、彼の名前はクレジットから外されています。
あらゆるスタッフが働きやすい職場であることはとても大切ですが、現在のディズニーは作品づくりにおいてもポリコレを意識した作品が多くなっています。9月27日(金)の「金ロー」で放映される『バズ・ライトイヤー』(2022年)では、メインキャラクターに同性愛者を登場させ、物語に大きく関わることになります。
アンデルセン童話『人魚姫』を原作にした実写映画『リトル・マーメイド』(2023年)には、アフリカ系アメリカ人の歌手であるハリー・ベイリーを人魚のアリエルに起用し、賛否が起こりました。社会の多様性に配慮した作品づくりでしたが、『バズ・ライトイヤー』も『リトル・マーメイド』も、興収的には厳しい結果となっています。
マーベル制作の『デッドプール&ウルヴァリン』やピクサー制作の『インサイド・ヘッド2』などが今年はヒットしているので陰に隠れがちですが、今後公開されるディズニーアニメは『モアナと伝説の海2』『ズートピア2』『アナと雪の女王3』など、過去のヒット作の続編ばかりなのも気になるところです。
ジョージ・ルーカスが味わった屈辱
近年のディズニーを象徴するエピソードとして、「ルーカスフィルム」買収時のジョージ・ルーカスに対する対応が知られています。「スター・ウォーズ」シリーズの“生みの親”であるルーカスはその権利をディズニーに売り渡す際に、新シリーズのあらすじも渡したそうです。