弁護士にも相談したが、相手にしてもらえなかったという。そうこうしているうちに、リョウが提示する“目標額”はどんどん上がっていった。100万稼いだときは、ATMで1回に下ろせる最高額の50万を超えるので、日付が変わった深夜にまたお金を下ろしに行かされた。

「一度、『別れる』と言ったら、リョウが自殺未遂をしたんです。連絡が取れなくなって、夜中に『病院にいる』と連絡が来ました。それからは、リョウの『死ぬ』という言葉がよみがえって怖くなり、リョウの要求を断ることができなくなりました

 本当に、リョウが自殺未遂をしたのかはわからない。「証拠はありません」と凛さんは言う。

“知り合いのおじさん”の怒りを買い、暴力を受けた

 もう精神的に限界だった。これ以上体を売ることはできない。元彼に80万借りたこともある。リョウは「目標額を達成したら、結婚しよう。そしたら、必ず返すから」と言った。

 凛さんは心のバランスを崩し、体重も10キロ近く落ちた。とうとう、闇金に手を出してしまった。すると今度は融資保証詐欺に引っかかった。いわゆる“マネーロンダリング”に加担させられていたのだという。凛さんは口座を凍結され、新しく口座をつくることもできなくなった。

 そして昨年、ふとしたきっかけで、住まわせてもらっていた“知り合いのおじさん”の怒りを買い、ひどい暴力を受けた。「今すぐ出ていけ」と怒鳴られ、凛さんは自治体の男女共同参画室が運営している相談窓口に連絡した。

 凛さんのこの冷静な判断力……ホストに大金をつぎ込むこととの対極にあるこの力があるのになぜ? 不思議でならない。が、誰しも多かれ少なかれそういう面を持っているのだろう。

 ともかく、適切な相談窓口につながったのは幸運だった。自治体の担当者から居住支援をしているNPOを紹介してもらい、シェルターに逃げ込むことができたのだ。風俗嬢をしながらリョウに大金を注ぐようになってから、1年半が過ぎていた。