つみたて投資で成功する人、しない人

何よりも大事なのはずっと続けること

本稿では、つみたて投資を継続させるための心得のようなものを、お伝えしておきたいと思います。

まずは「どんな人が(つみたて投資で)成功するんだろう?」ということからお話ししておきましょう。読者の方は将来の資産形成をするために、つみたて投資を学んでいるのですから、自分の投資が成功したかどうかの答えが出るのは20年も30 年も先のことになります。

ただこれまで多くの個人投資家の方や、個人投資家へアドバイスをするファイナンシャルプランナーやアドバイザーの方たちの話を聞いていくなかで、成功する人としない人の違いがどこにあるのかが見えてきました。

まず、最初に挙げるのはこの章のテーマでもある「ずっと続けることが大事」ということです。そんなこと簡単じゃないかと思うかもしれませんが、実はこれが一番難しいことなのです。

将来のことは誰にもわかりませんが、少なくともこの20年間だけに限って言えば、日米ともに株価指数は右肩上がりのトレンドですから、投資を続けてさえいれば、成功した可能性が高かったのです。

しかし、時折訪れる急落局面に多くの個人投資家は驚いてしまい、先の見えない恐怖に襲われてつみたて投資をやめてしまいます。

株価指数が右肩上がりの時は気分よくつみたて投資を続けられるかもしれませんが、右肩上がりの時というのは平均購入単価が上昇していくだけです。実は投資の成功から遠ざかっているとも言えます。

そして、実は株価指数が下落すればするほど、平均購入単価が下がっていくため、次の上昇相場になった時に成功する可能性が高くなるのです。つまり、下落局面こそつみたて投資をやめてはいけないのです。

相場の変動を気にしない

次のポイントは「相場の変動を気にしない」ということです。投資をしているとついつい相場の変動を気にしてしまいますし、投資をしていくなかでできた投資友だちと、相場が動いた理由を話し合ったり、これからの相場展開を話し合ったりする楽しさを実感することでしょう。

しかし、相場が大きく動き出すと、ついつい長期的な視点を忘れてしまい、目先の相場の動きに心を揺さぶられて、次第に冷静な判断ができなくなります。これは人間の精神に関することですから、投資経験が長くなれば気にならなくなるというものでもありません。

私はせっかく投資の世界に足を踏み入れるのであれば、新聞や経済学・統計学などの書籍を読んで、勉強したほうがいいと思っていますが、それはあくまで知識を蓄えましょうということであり、毎日相場を見ながら精神をすり減らすような生活には反対です。自分の知識が積み上がると、仮説とともに将来の予想を立てることができますが、その予想に基づいて投資をするのではなく、あくまで自分の予想を立てる能力を高めるために、あるいは答え合わせをするために相場を見るようにし、投資については機械的に淡々と毎月同じ金額を一定のタイミングで続けるべきでしょう。

しっかりと分散をする

日経平均株価やNYダウなどの株価指数は、複数の銘柄で構成されています。たとえば日経平均株価であれば225銘柄、NYダウであれば30銘柄によって構成されています。

複数の銘柄で構成されているわけですから、構成銘柄のうち半分が値上がりする一方で、残り半分は値下がりして、結果的に指数自体はそれほど動かないという日が多く見られます。2000年から2019年までのデータを見てみると、日経平均株価は毎年の年間騰落率の平均は3・8 4%の上昇となっています。

一方で、個別銘柄に目を向けてみると、1年で50%以上も株価が上がっているものもあれば、なかには2倍以上に値上がりしているものもあります。

このようなニュースを見てしまうと、ついついインデックスファンドなど買わずに、個別銘柄に投資して一発当ててやろうと思ってしまいそうですが、何も知識がないまま個別銘柄に手を出すのはギャンブルになってしまいます。1年で50%値上がりする銘柄がある一方で、50%値下がりする銘柄があるのも事実です。そして、自分だけは値上がりする銘柄を見抜くことができるなどという都合のいい話はありません。

老後資金のために運用しているお金を、うまくいけば儲かるが、失敗したら多額の損失を被るというギャンブルに使ってはいけません。

じれったさはあるかもしれませんが、派手なニュースに惑わされることなく、しっかりと投資先を複数に分散できる投資信託を活用してコツコツ積み立てましょう。

無駄な手数料を払わない

本稿では「将来のことは誰にもわからない」と書いてきました。しかし、投資を始める前から確実にわかることがあります。それは手数料です。

この投資信託を買う時にいくら手数料がかかるのか(買付手数料)、保有している間にどれだけ手数料がかかるのか(信託報酬)、売る時にどれくらい手数料がかかるのか(信託財産留保額)。今は法律上、事前に全ての手数料は開示しなければいけなくなっています。手数料は投資をする際には確実にかかってくるものですから、リターンに対してマイナスな要素である手数料を極力払わないようにすることは重要です。

手数料だけが商品を選ぶ際のポイントではありませんが、買付手数料がかからないノーロードと呼ばれる投資信託で、かつ信託報酬が低く、信託財産留保額がかからないものを優先して選びましょう。

レバレッジをかけない

最近は投資信託の中でも、レバレッジがかかっているものが証券会社のランキングで上位にくる傾向があります。

レバレッジとは、「てこの原理」の「てこ」からきている言葉で、少しのお金でその数倍の投資をすることによって、投資成績を増幅させる仕組みのことを言います。

このレバレッジ投資信託が人気の理由は、ひと言で言えば一瞬で多額の利益を出せる可能性があることでしょう。

たとえば、1日で5%日経平均株価が上昇した日に、「日本株4・3倍ブル」という投資信託を買っておけば、1日で約22%も投資資産が増えるのです。

しかし、気を付けなければいけないのは、その逆も起こり得るということです。そして、これらのレバレッジ投資信託は商品の性質上、保有期間が長くなれば長くなるほど減価していくので、長期保有には適しません。本書の読者には縁遠い商品だと私は考えます。