◆考えたくない、直視したくない現実
そして、生活に安心できるほどの預金も無い。
「最初の話に戻りますが、ご近所からは『お母さんのこと、見捨てたらいけないよ』といわれます。わりと近くに親戚の家が何軒もあって、私自身は交流があるのですが、母はその短気な性格から嫌われているのでサポートは期待できそうにないんです」
かつては四人で住んでいた一軒家、それに加えて墓もある。考えなければならいないのはわかっているけど、考えたくない。将来はどうなるのかわからないのに、親が老いていくいまそれを積極的に考えないのは、そのまま“先送り”を意味することになる。
遠方に住み、現実を目の当たりにしなくていい姉夫婦の気楽さがうらやましい。
「気が晴れないんですよね」とため息をつくカスミさんに共感する、40代独身女性はきっと全国にいる。
<取材・文/三浦ゆえ>
【三浦ゆえ】
編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)、『リエゾン-こどものこころ診療所- 凸凹のためのおとなのこころがまえ』(三木崇弘著、講談社)、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)などの編集協力を担当。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。