しかも、その日のカナは普段よりも妙に色っぽく見えて、つい理性が吹き飛んでしまったんです。今、思えば冷静に断るのが会社としては正しい判断なのですが……。一時の気の迷いでカナのことを抱いてしまったんです」
春山さんがそう肩を落とすのには理由があります。なんと春山さんには当時、カナさんとは別に結婚を考えていた彼女がいたというのです。
◆「徐々にフェードアウト」と考えていたら…
「彼女の由佳とは学生時代からの付き合いです。当時は、由佳が神奈川県の支社に配属にしていたので、あまり会えないのが悩みでした。言い訳になってしまうけど、その寂しさもあったんです。でも、カナの誘いに一度乗ってしまった以上、実は彼女がいるなんてとても言えない。とりあえずカナとの契約が終わるまで関係を続けて、竣工したら徐々にフェードアウトしていこうと考えました」
その後、店は無事に完成し、カナさんは小料理店をオープンさせました。オープン準備に追われるカナさんと会う時間もどんどん減っていき、春山さんはこのまま連絡を取らずにいようと思っていました。
ちょうどその頃、本命彼女の由佳さんが東京本社に戻り、会う時間が増えていきます。お互いに結婚を意識するようになり、由佳さんの両親と食事に行くほど話が順調に進んでいきました。しかし、そんな幸せいっぱいの春山さんの元にカナさんから急に連絡が来たのです。
◆「妊娠したかもしれない」
「カナが『妊娠したかもしれない』と言うんです。一瞬、冗談かと思いました。毎回避妊していたのでできるわけがないと。でも、カナはここ半年で僕以外と関係を持ったことがない、僕しかいないと言うんです。
正直、半信半疑でしたが店をオープンさせたばかりだしどうするのか尋ねると、『子どもは欲しかったから産みます。責任とって結婚してください』と。もう、頭が真っ白になりましたね……」
その事実を由佳さんに話せるわけもなく、その間にカナさんのお腹の子どもはどんどん大きくなっていくのでした。