◆困惑するばかりの周囲
春奈さんは、眉をひそめる。
「事あるごとに、私たちにこんなことを話すんです。ランチの席で。そんな話に、一体何と返せばいいのか……。でも、施設長の“愚痴”を否定すると、激高される。だから困惑を浮かべた表情の同席者とチラリと目くばせして、何もつっこむなとけん制しあいつつ、そうなんですね、としか返しようがありません。願わくは、自分の母親がそんなことを言っていると、彼女の息子さんの耳に入りませんように……」
さらに心配なのは、その混乱した関係を浄化するためにと、施設長が療法士から高額なパワーストーンを購入していることだ。
そのパワーストーンは、もちろん一度の購入だけではすまない。たびたび「メンテナンス」と称するヒーリング(もちろん有料)に足を運ぶ必要があるという。
療法士を信頼する母親たちも同様に、彼から買ったパワーストーンを身につけている。施設内で保護者たちを見かけると、療法士に関わっているかどうか、手首のブレスレットで見分けがつくほどだという。