語彙力をみがくのは、あなた自身をみがくのと同じことなのです。
◆「好き」を記録しておくために
「『好き』は、一時的な儚(はかな)い感情である」と本書。そんなことはない!とあなたは断言できるでしょうか。できないですよね。でもそれは「悲しいことでもなんでもなくて、そういうものなのです」。
何らかの事情で、推しが推しでなくなったとき、しばらくは食欲もなくひきこもるかもしれません。でもほとぼりが冷めれば次の推しができて、また熱狂的な日々が幕をあけます。
「好き」の気持ちが移ろいでいくから、人は悲しみから立ちなおり、生きていけるのでしょう。
ただ、「『好き』が揺らいで焼失したとしても、一度『好き』を言葉にして残しておけば、その感情は自分の中に残り続ける」と本書は言うのです。
推しもあなたの宝物ですが、推しを思うあなたの気持ちもまた唯一無二の宝物なのです。好きだった気持ちは、やがて必ずあなたを救います。
いつしか過去を振り返ったとき、あなただけの言葉で推しや好きな気持ちが語られていたとしたら、どんなにか素敵でしょうか。
ある意味、推しは自分を映す鏡なのかもしれません。あなたに、愛に満ちた世界をおしえてくれた推し。推しをとおして、自分の新たな可能性、言葉や文章の魅力を知ってみませんか。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx