◆10歳の戦争体験

やんばるの戦(沖縄戦)がはじまったのは昭和20年、アメリカ軍が上陸してきたのです。この時、大田さんはわずか10歳。沖縄が完全降伏するまでの約3ヶ月間、山の中で息を潜めて生活していたといいます。

90歳のおばー1
すぐそばまでアメリカ軍に包囲されているのです。

「山の中で感じた不安と恐怖は、90歳になった今でも忘れることはできません」

この言葉の重みを笑顔に変えたのは、命の尊さを身をもって経験したからではないでしょうか。

戦争が終わってからも、相変わらずの貧乏生活。高校時代から大田さんの職業遍歴がはじまりました。保育士、バスガイド、ラジオ局の電話交換手。

23歳で結婚してからも、子育てをしながら働き続けます。アイスキャンディー店、精肉店、鮮魚店、農業、畜産業、民泊。

家族のため、村の人たちのため、助け合いながら、とにかく動いてきたのでしょう。戦火を潜り抜けた命を、決して無駄にしないで生きてきたのです。

「やればできる、やらなければできない。できないことは、やらなかったこと」

何事にも前向きに、一生懸命働いて、5人の息子さんを大学まで出しました。「夫と私の誇りです」と語りながら、今日も朗らかに笑います。