◆マジョリティー側にいる稲垣吾郎に心揺さぶられる

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 そんな磯村勇斗は、中学の時の同級生だった、今は変わり映えのない日々を送っている寝具販売員の新垣結衣と再会し、そして「この世界で生きていくために、手を組みませんか」と提案する。

 2人は他の人からは到底理解はされないだろう、とある「性癖」も語り合っており、だからこそ意気投合ができたのだ。

 そして、いかにどれだけ特殊な考え方をしていたとしても、普通の男女のカップルではなかったとしても、同じ価値観を持ち巡り合ったこの2人の関係もまた尊いもの、多様性のひとつだと認めたくもなるし、場面によっては2人はどこにでもいる普通の人たちにも見えてくる。

 だが、物語は多様性という言葉に当てはめるだけでは、決して許してくれない。その具体的な理由はネタバレになるので秘密にしておくが、ある事実が明らかになった時、やはり普通かつマジョリティー側にいる稲垣吾郎の言い分の正当性が、観客の心を強く揺さぶってくるのだ。

 そして、物語の結末はどちらが正しくて、どちらが間違っているという、安心できるものではない。良い意味で観客に「宿題」を残してくれる、原作小説のエッセンスを拾いつつも、その後味が異なる見事なラストまで、ぜひ見届けてほしい。

<文/ヒナタカ>

【ヒナタカ】

「女子SPA!」のほか「日刊サイゾー」「cinemas PLUS」「ねとらぼ」などで映画紹介記事を執筆中の映画ライター。Twitter:@HinatakaJeF