◆スマホを悪者にするつもりも、手放すつもりもない

――現代の人々は、ほとんどがスマホのある生活を当たり前に思っているように感じます。ふかわさんはスマホを持たずに旅に出ることが怖くはなかったのでしょうか?

ふかわりょうさん(以下、ふかわ)「不安はありました。でもそれは、ちょっとした冒険に出る前のワクワクを伴った不安です。スマホで埋められていた隙間から、いったいどういうものが出てくるだろうかと。海の向こうに何があるかわからないまま航海に出るような感覚でした」

スマホを悪者にするつもりも、手放すつもりもない
――もともとスマホという存在に少々疎ましさは感じていた側面もありますか?

ふかわ「いえ、そういうわけではないんです。私はスマホを悪者にするつもりも、手放すつもりもありません。文明やテクノロジーは素晴らしいものである一方、使い手次第のものだとは常々思っているんですよね

本の冒頭にも書きましたが、初めてアイスランドに訪れた時、当時はスマホではなく携帯電話でしたが、電波が繋がらない状況が最初は不安だったのに、2日もすればそれが心地好くなっていったことで、小さな端末の本当の重さを感じたんです。

今回の旅でも帰った後、スマホが漬物石のように重く感じたし、電源を入れることがすごく憂鬱でした。でも、仕事はしなければならないから電源は入れざるを得ない。スマホの存在の重量がさらに増したような気がします」