◆誰も幸せにならない茶番にぐったり
美織さんの夫はこの状況を見てどう思っているのでしょうか。
「何度も夫にはこの話をしているのですが、『まあ、おかあさんも寂しいんだよ。孫と一緒に暮らしたいだろうし。悪気はないから許してやってよ』と言うだけで間に入ってはくれません。悪気がないのが一番タチが悪いですよ」
怒りはとまりません。
「兄夫婦がもしも不妊で悩んでいたらと思うと、義母の機嫌をとるために『子供はかわいいですよ』と言う自分が嫌だし、何より兄夫婦に申し訳ない気持ちでいっぱいです。誰も幸せにならないこの茶番をいつまで続けるのか、考えるとぐったりします」
美織さんは今度の帰省で、きっぱりと義母のお願いを断ろうと考えているそうです。
「どうせ義母とはそんなに会わないし、東京と岡山は遠いから、まぁ嫌われてもいいかなと思うようになりました」
帰省ひとつとっても、いろんな気苦労があるものですね。
―シリーズ「帰省の悲喜こもごも」―
<文/瀧戸詠未 イラスト/ただりえこ>
【瀧戸詠未】
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。Twitter:@YlujuzJvzsLUwkB