昨年12月から配信開始された『幽☆遊☆白書』(Netflix)ではラスボス・戸愚呂(弟)役で圧倒的な存在感を示していましたが、やはり完全復活を印象付けたのは『地面師たち』でしょう。
本作は2017年に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」から着想を得た、不動産詐欺集団・地面師を描いた全7話のクライムサスペンス。
豊川悦司さん演じる主人公・大物地面師を中心に結成された地面師チームが、前代未聞の時価100億円超の土地をエサにして、大手デベロッパーに詐欺を仕掛けて巨額を巻き上げるまでを描いています。
◆綾野剛の“なりすまし”に脳がバグる
綾野さん演じるもう一人の主人公も地面師チームの一員。冷静沈着な交渉役なのですが、ターゲットを騙すため、ときには物腰の柔らかいビジネスパーソン、ときにはホストクラブの下っ端従業員と、違う人物になりすましていくのです。
この“なりすまし中”こそ綾野さんの演技力に脱帽させられるのですが、我々視聴者は彼の演じるキャラが本当は詐欺を働こうとしている犯罪者であるとわかっていながら、どこかなりすました人物にも惹かれてしまいます。
温和なビジネスパーソンの語り口についほだされそうになったり、悲惨な人生を送っているという設定の下っ端従業員につい同情しそうになったり、脳がバグる感覚を味わえるのです。
◆“愛されクズホスト”の魅力を引き出す
余談ですが、綾野さんはとある歌舞伎町のNO.1ホストに近付くために従業員として潜入したのですが、そのホストがとにかくクズすぎて、それゆえに視聴者から“愛されキャラ”、“イジられキャラ”になっています。
調子に乗って綾野さん演じる下っ端を嘲笑してアゴで使っていたものの、弱みを握られて立場逆転したと思ったら、気持ちいいほどプライドを捨ててヘコヘコ。口調が「~っす」と変わり、「おつかれさまです」「すんません」と態度も低姿勢に劇変するので、その変わり身の早さは必見。