ただこの夫、妻に無関心なのかといえばそういうわけでもない。支配欲が強いのは確かなのだが、やたらと外面がいいということを考え合わせると、彼は彼で、相当大きなトラウマを抱えているようにも見える。
◆幼なじみとの再会で、久しぶりに心が躍動したのに
ある日、美羽は中学時代の後輩・冬月稜(深澤辰哉)と、昔なじみの図書館で再会する。2年後輩のくせに「夏野~」と呼び捨てにし、いつも駄菓子屋で買うようなお菓子をくれて気持ちを和ませてくれた冬月くん。あのころの思い出が一気に蘇り、美羽は冬月への親近感を新たにする。
冬月は、フェアトレードの会社を興しており、そこを人に預けてアフリカに学校を作りに行くと生き生きと語る。そんな彼を羨ましく思う美羽に、冬月は日本での自分の最後の仕事となるフェアトレードのイベントを手伝ってほしいと持ちかけた。
手製の栞(しおり)を作り、久しぶりに自分の心が躍動するような経験をした美羽。そんな彼女を、夫の宏樹がわざわざやってきて見つめていた。ここに夫の複雑な心理が見え隠れする。
◆酔った勢いで夫に襲われ、そのまま冬月と……
妻に去られたら生きてはいけない。宏樹にはそれがわかっている。だから酔った勢いで、無理やり妻を抱く。不本意なセックスをした美羽は、明け方、ふらふらと例の図書館へ赴く。そこには冬月が忘れ物を探しに来ていた。
彼はその日の午後、旅立つのだ。もう会えないかもしれないという切迫感、冬月に会ってやっと動き出した心を止めたくない熱い思いに突き動かされて、美羽と冬月は求めあう。
「一時帰国するから。迎えに来るから」
冬月の言葉に、美羽は生きる希望を見いだす。現地に到着した、順調にいってると冬月から毎日連絡が来る。
そして彼女は気づく。生理が遅れていることに。