しびれを切らした牧野は、保健室内にあるウサギのぬいぐるみを野咲の前に置き、「こいつになら喋れるか?」と聞く。続けて、牧野はぬいぐるみの左腕を動かしながら、裏声で「ゆきちゃん、話してよ」と語りかける。突如として人形劇が開演するが、野咲の心を開くことはできずに早々に閉演。
◆それでも子どもの心を開いた“言葉”は
牧野は気恥ずかしさもあり、気まずそうな表情を見せるが「お前が困ってるなら、その原因を見つけて取り除くのが俺の仕事だ」「少なくとも最初から疑ってかかるようなことはしない」と小細工ではなく本音でぶつかる。
そして、野咲の本心を聞くことに成功して、野咲にナルコレプシー(制御できない眠気が日中に繰り返し起こる睡眠障害)の疑いがあることを見抜いた。
牧野が医師という仕事に誇りを持ち、本気で生徒に寄り添おうとする優しさが垣間見せるシーンと言える。人形劇で見せた茶目っ気があったからこそ、そうした人柄がより強く印象に残り、松下の表現力の高さを感じさせられた。
◆「子どもだからなんだ?」生徒に声を張り上げた理由
本作のメッセージ性の強さにもついつい心を奪われる。終盤、保健室から教室に戻る野咲。元気そうに見える野咲を見たクラスメイトから「やっぱり仮病かよ」「嘘ばっかり」と保健室でサボっていた疑いをかけられ、野咲は思わず「私だってこんな自分嫌いだよ」と泣き始める。するとナルコレプシーの発作が出て、全身の力が一気に抜けてしまう。ただ、牧野が現れて倒れそうになる野咲の身体を支え、そしてナルコレプシーの症状について説明を始める。
しかし、クラスメイトの1人が「そんな都合の良い病気あるか?」と横やりを入れられると、牧野は「周囲の人間が病気を知らないことで、知らず知らずのうちに当人を追い詰める。今お前たちがやってることがそうだよ」とクラスメイトが野咲を馬鹿にしたことにより、症状を悪化させた可能性を荒々しい口調で指摘。