◆転落や破滅はしなくても
生きがい、仲間、成功、安心。これらを求める気持ちは人として当然のことだが、様子のおかしいコミュニティにどっぷりつかっていれば、家族が心配するのもまた、当然だ。
しかし、母の棲むマルチ沼をこの先も見つづけていくしかないだろうと、Eさんは語る。わかりやすい転落や破滅のマルチ商法エピソードではないが、決定打がないまま微妙な気持ちを抱えつづけていくのも、苦しさのひとつだと感じられた。
「母がマルチ沼にいるかぎり、僕たち家族も間接的に沼と関わらざるをえません」
家族の沼の、ありがたくない特等席。そうした眺めを、今後もお届けしていこう。
<文/山田ノジル>
【山田ノジル】
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru