兵庫県神戸市にある須磨寺は、源平合戦の「一ノ谷の戦い」の舞台にもなった、歴史ある寺院です。境内には、戦いで命を落とした平敦盛が愛用していた品や、史跡を見ることができます。拝観料も無料なので、気軽に訪ねてみてください。
神戸市にある須磨寺
須磨寺(すまでら)は、神戸市須磨区にある真言宗須磨寺派の寺院です。仁和2年(886)年に開かれた歴史あるお寺で、正式には、福祥寺(ふくしょうじ)といいますが、古くからこのような通称で親しまれています。
広い境内には、本堂や三重塔、大師堂などの建築物のほか、多数の文化財もあります。また、こちらは源平合戦ゆかりの寺としても知られており、宝物や史跡を見ることもできます。
ほかにも、自然の石を使ったユニークな人形、センサーで動くお猿さん、からくり時計など、面白い見どころもあり、散策を楽しむ人の姿も見られます。
境内を散策しよう
祈りの回廊 亜細亜万神殿(あじあばんしんでん)
ネパール大震災の被災者慰霊と復興を祈る場として整備されました。お寺に寄進された東南アジアやインドの石仏が安置されています。境内の最も南側、仁王門そばにあります。
仁王門
境内の入口にある門です。平安時代の武将の源頼政が再建したと伝わります。門の左右には、仁王力士が立っています。こちらは、平安時代末期から鎌倉時代初期に活動した仏師「運慶」と、その子の湛慶による作と伝えられています。仁王門の前には、龍華橋が架かっています。
源平の庭
源平合戦の一ノ谷の戦いにおいて、熊谷直美は、馬に乗って海の沖に逃げようとした平敦盛を呼び返し、須磨寺からほど近い須磨の浜辺で首をはねたと伝わっています。この場面を再現したのが、「源平の庭」です。枯山水の庭には、馬に乗る平敦盛と熊谷直美が向かい合う様子が見られます。
宝物館
宝物館では、平敦盛と源平ゆかりの宝物、須磨寺の歴史的宝物が展示されています。敦盛が生前に愛用していた「青葉の笛」、「高麗笛」なども見られます。
また、こちらには、アートデザイナーの故木島武雄氏が、須磨や各地の小石を集めて造った石人形もあります。源平合戦の様子が再現されており、センサーで動くようになっています。石の形をそのまま活かしたユニークな人形を見てみてください。
納経所・寺務所
納経所では、各種お守り、念珠やキーホルダーなどが販売されています。種類も豊富なので、ゆっくりと選んでみてください。御朱印もこちらでいただけるそうです。
こちらの壁面には、からくり時計が設置されています。午前9時から午後4時の毎時、小坊主さんの読経とお琴のメロディーとともに、須磨寺ゆかりの人物が登場するので、見てみてください。
唐門
源平の庭から参道を進むと、本堂へと続く階段が見えます。この階段は少々段数が多いので、上るのが大変という方は、すぐ左にある宝物館・寺務所のエレベーターを利用すると良いでしょう。階段を上りきると、唐門があります。
本堂
唐門をくぐると、本堂が見えます。開創当時からありますが、災害などにより何度も再建されており、現在のものは、慶長7年(1602年)に建てられました。本尊の聖観音菩薩のほか、毘沙門天、不動明王が祀られています。外観に派手さはなく、端正な雰囲気です。
大師堂
本堂の左側に、大師堂があります。こちらには、弘法大師のほか、真言宗の八人の祖師「真言八祖」がお祀りされています。毎月20日、21日には、縁日「須磨のお大師さん」があり、多数の信者が参拝するほか、参道には屋台などのお店も出るそうです。
義経腰掛けの松・敦盛公首洗池
大師堂の左手に、古い松の木が屋根の下で保護されています。一ノ谷の戦いの後に源義経が、この松に座り、敦盛の首と笛を実検したといわれています。実検とは、本当にそれであるかを確かめることです。松の前には池があり、義経は、ここで敦盛の首を洗ったそうです。
三重塔
境内南西の高台に、三重塔が建っています。以前の塔は、約400年前の文禄大震災で倒壊したため、昭和59年に再建されました。内部には、大日如来が祀られています。
塔は、平成26年(2014年)に塗り替えられたため、鮮やかな朱色が美しいです。落ち着いた建造物が多い境内でも、目立っています。
塔の周囲には、四国八十八ヶ所お砂踏み霊場があります。それぞれの札所にある砂を、ガラス越しに踏むことにより、お詣りできます。
五猿
三重塔のそばに、5つのお猿さんが並んでいます。見ザル、言わザル、聞かザル、怒らザル、見てごザルの猿を合わせて「五猿」と呼んでいます。
頭をなでると、手が動く仕掛けになっており、目を覆ったり耳をふさぐ様子が面白いです。猿の上に掲げられた五猿の由来を読んで、心穏やかに過ごしてみてはいかがでしょうか。
敦盛公首塚
三重塔のさらに西の奥に、首塚があります。一ノ谷の戦いで、熊谷直美に討たれて戦死した平敦盛を弔うために建立されたものです。後で紹介する須磨浦公園には、胴体が祀られているとされています。
流水庭・源平の梅
僧侶の居住スペースである庫裏の前には、小さな庭があります。こちらは流水庭と言うそうで、水の流れる音が心地よいです。
お庭では、季節の花も見られます。筆者が訪れた際には、梅の花が美しく咲いていました。
商店街や美しい都市公園も!須磨寺周辺の観光スポット
須磨寺の散策が終わったら、周辺の観光スポットにも行ってみましょう。和菓子店やカフェのある商店街、源平ゆかりのスポットのほか、季節の花が美しい公園もありますよ。
須磨寺前商店街
須磨寺と山陽電鉄「須磨寺」駅の間には、須磨寺前商店街があります。200メートルほどの間に、カフェや和菓子店、パン屋などが立ち並んでいます。
筆者は、和菓子店の「大師餅本舗」に立ち寄りました。みたらし団子と須磨琴という和菓子を購入しましたが、美味しくいただくことができました。名物の大師餅、敦盛団子といった須磨にちなんだ和菓子もあるので、お土産に買ってみてはいかがでしょうか。すぐに食べたい方は、商店街の須磨寺側入口に、お大師広場という休憩所があるので、こちらでいただくのも良さそうです。
須磨浦公園
源平の古戦場である須磨浦公園にも近いです。須磨寺駅から電車に乗り、約8分ほどで到着します。さきほど須磨寺に平敦盛の首塚があると紹介しましたが、こちらにも「敦盛塚」があり、胴体部分をお祀りしています。
松の並木から見る海も美しく、春には桜も楽しめます。また、須磨浦ロープウェイに乗ると、須磨の海や神戸の街並みを一望する景色が楽しめます。
須磨離宮公園
皇室の別荘「武庫離宮」があった跡地に整備された、都市公園です。欧風庭園の本園と、植物園からなる広い公園では、四季の花々が楽しめます。
花しょうぶや桜、ぼたんなどが見られますが、特に春と秋に咲くバラは美しいです。高台にあるので、天気の良い日などは瀬戸内の海が眺められます。須磨寺からは徒歩約10分、山陽電鉄の須磨寺駅、月見山駅からは、どちらも徒歩約10分で、正門に着きます。