ちょうどそのころ、妹のメイちゃんの浮気彼氏とメイちゃん自身の浮気相手・沼田(深田竜生)が鉢合わせし、勢い、彼氏が沼田を殴ってしまう事件が発生。メイちゃんに呼び出され、姉のメグ(仁村紗和)、メグの彼氏、リョウ、リツ、メイちゃんが警察署に一堂に会することに。わちゃわちゃと口ゲンカになりますが、リョウはこの事件をモチーフに脚本を書くことにしたのでした。

■それはもうセックスです

 学生時代、演劇部で脚本を書いていたリョウのそばには、いつもリツがいました。リョウがセリフに詰まると、リツが助け舟を出してくれた。

 そのころとまったく同じように、リョウとリツは部屋にこもって脚本作りを始めます。人物を配置し、リョウがセリフとト書きをしゃべって、それをリツがパソコンに打ち込んでいく。

 作品が作家の生み出した子どもだとして、それを作ることを2人で協力してやるなら、それはもうセックスなんです。

 脚本を書くことは裸を見せることです。そのセリフを自分で読み上げるなんて、裸踊りなんです。

 大御所脚本家の黒崎さんはリョウの創作姿勢を指して「自分を主語にしてドラマを作ったところで、マスには届かない」と断言しました。そうした創作を、界隈では「オナニー」と呼びます。

 それを2人でやってんだもんな。学生時代から、リツと2人でやってたんだもんな。

 リョウは恋愛にも結婚にも興味がないと言います。それが自分にとって自然だと。

 しかしリョウには、自分にとって一番大切なことを、一緒にやる相手がいる。その相手のために棚を作ってやる労力を厭うことはないし、一緒に美味いものを食えば美味い。

 それは「恋愛」という名前の関係ではないし、「結婚」という手続きに向かっているわけではないけれど、かけがえのない特別な関係であることは間違いありません。そして、2人で作品を作る行為はリョウにとって、これ以上ない悦びであることが描かれます。

 そうして完成した脚本はコンクールの二次で落ちて、審査員だった大物恋愛脚本家の大平かなえ(筒井真理子)の目に留まり、リョウは大平に弟子入りすることになりました。