「500ページを超える長編小説なので、原作通りに再現するには限界があるでしょう。ただ、設定、ストーリー、シチュエーション、登場人物、エンディングへの布石を含め、まったく別物の作品になっており、原作を期待していた人たちにはオープニングから疑問符がついていたのではないでしょうか」(前出の映画ライター)

 さりとて辻村氏は、9月11日に行われたジャパンプレミアで「私も、原作のファンの方々もこれが見たかったと思う『傲慢と善良』になっている」と大絶賛しており、映画の出来栄えには大満足のようだ。その一方で、原作改変による“不完全燃焼感”の一因は藤ヶ谷にあるのでは……との見方もあるという。

「藤ヶ谷は辻村作品の大ファンであることを公言しており、今回の映画の原作小説についても刊行時に読んで『心に刺さった』とほれ込み、2回も読み返したそう。特別な思い入れがあったことで、映画版では『原作のかおりを残したいし、映画ならではの良さも入れなくてはいけないと思った』や『話し合いながら、みんなで作っていった。それが良い思い出として残っている』と自身が思ったことを監督やスタッフにかなり主張したようです。辻村氏が現場を見学に来た際には、『“私の原作とあまりにも違いすぎます”って言われたらどうしよう』と心配したそうですから、かなり自分の意見を提案したと思われます」(芸能記者)

 一部からは不満の声が挙がっているが、 芸能ジャーナリストの竹下光氏はこう語る。

「ドラマや映画の出来不出来に関して主演キャストが矢面に立たされるのはよくあることですが、原作を愛して思い入れや愛情をもって取り組んだ作品であればなおさら不憫ですよね。実際のところ藤ヶ谷さんが作品のシナリオや演出にどこまで関わったのかはわかりませんが周囲もそれを認めたわけですし。完成した映像化作品を原作者の辻村さんも絶賛しているわけですから“改悪”とは言えないのではないでしょうか。実際、映画サイトのレビュー欄では今回の映画を評価する意見も見受けられますし、興行成績に関しても今後の巻き返しに期待したいところです」