さまざまなハラスメントが社会問題として話題になっている昨今ですが、自分が被害にあった時、だれに相談すればいいのか、どこからがハラスメントと呼ばれるのかがわからず頭を悩ませている方も多いようです。そんなお悩みに弁護士、齋藤健博さんがお答え。今回は隣の席の人の騒音に悩まされるケースです。

Q.「強いタイピング音や威圧的な態度が気になります…」

大手企業の派遣で事務として働いているのですが、隣の席の人の騒音に困っています。
タイピング音がうるさかったり、貧乏ゆすりをしてトントン音を鳴らしたり、風邪でもないのにしょっちゅう咳払いをしたり、なんとなく威圧感を感じてしまいます。今までは違う席に座っていたため気にならなかったのですが、席替えをしてからずっとこのような状態で、時々チラチラ私の行動をチェックするように画面をのぞいてくるのも、なんだかなあと思っています。事務だと別の場所で作業をすることもできないので、毎日隣の音を気にしないようにしていますが仕事に集中しにくい状況です。

いつも良くしてもらっている社員さんに相談したことがあったのですが、前にもこんな話題があったらしく、上に報告はしたみたいなのですが、特に動くこともなくそのままだそうです。派遣という身の立場なので、私が我慢すれば良いのかなと思い解決策が見つかっていません。このような音に関してもハラスメントに該当するのか教えてください。(HIKARU/26歳/派遣)

A. 特定の人物を攻撃の対象にしている場合はパワハラとなる可能性があります!

HIKARUさんのケースでは、パワーハラスメントが成立する余地があります。というのは、パワハラの定義は、一応、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的肉体的苦痛を与える行為であると定義されています。直接的な嫌がらせはなくても、HIKARUさんにだけ、騒音を与える行為は業務の合理性がないことを意味していますし、ある意味で精神的な攻撃ともとることができるからです。もちろん、セクハラの典型的な攻撃類型とは異なりますが、派遣社員である地位に基づく差別ともみることができるでしょう。

最近の言葉では、ハラスメント・ハラスメントといって、なにがなんでもハラスメントであると主張すること自体がハラスメントであるという類型の用語も存在しています。しかし、明らかにHIKARUさんのみを攻撃の対象としていること、行為をやめさせてほしい陳情をしたのに無視をされたことを正当に主張することで、ハラスメントであると承認させることは十分可能ではないでしょうか。