熊田氏は、マンガの原画とコミック誌の絵について「まったく別物」と表現している。小学館で最初に担当した手塚治虫氏の原稿を見た際には、ペンタッチやスクリーントーンの使い方など、マンガ誌で見るのとはまるでちがう迫力に、原稿を持つ手が震えたのだそう。

同氏によると、コミック誌は束を出すために粗悪な紙が使われており、ペンタッチはほとんど消えてしまうという。また、サイズの小さな単行本ではトーンの微妙な陰影なども潰れて極めて単調なものになってしまうのだとか。さらには、カラー原画は多色で描かれたものを4色で再現するため、粗悪な紙と相まって原画とは似ても似つかないものなっているのが現実なのだそう。

そして、原稿用紙は酸性紙のため劣化が早く、20~30年で変色し、ひどいものはボロボロになっていくことや、枚数が多いために保管もむずかしく、数十年後には消失しかねないことなども見過ごせない課題のようだ。

今回展示される12人の作家のひとりである山本康人氏は、カラー原画が印刷された際の口惜しさを語っている。加えて「今回、カラー原画をデジタルで見ていただけるということで、何か少し報われたような気がして実にうれしいですよね(一部抜粋)」とコメントを寄せた。

マンガ原画をデジタルで永久保存する「マンガ・アート・ミュージアム」で、特徴的なペンタッチや色味、繊細に削られたスクリーントーンの表現力、原画だけが持つ迫力と素晴らしさを感じてみては。

「マンガ・アート・ミュージアム」URL:https://manga-art.jp/pages/museum

(Higuchi)